■決戦―10■
廊下と階段を自在に飛び交い、生徒たちを恐怖とパニックに陥らせていた鳥たちの動きが、一斉に――まるで電池が切れたかのようにおとなしくなった、その瞬間をバンジーは見ていた。
廊下の天井付近を、バサバサと大げさに羽ばたいて飛んでいたカラスも、狂ったように翼を上下し、羽をあちこちに散乱していたハトも、統制なく飛び回り、そこら中にぶつかっては床に落ちたスズメも、その動きを止め、すーっと音もなく滑空し始めた。割れた窓を見つけた鳥は、そこから外へと
いったい、鳥たちになにが起きていたのか、あるいはこれからなにかが起きようとしているのか、バンジーにはまったく見当がつかなかったが、事態が推移しようとしていることはまちがいないなさそうだった。
回りにいる生徒たちもざわつき始めた。鳥嫌いの連中も、鳥たちが不気味な鳴き声を上げなくなったことで、少しずつ冷静さを取り戻しつつあるようだった。
生徒たちの動きを制したいバンジーたちにとっては歓迎するべき変化だが、まだ油断はできない。バンジーはかたわらにいたウナギに言った。「なんだかわかんねぇが静かになったな……でも、気を抜くなよ」
「ああ。わかってる」ウナギは頷いた。
いま二階の廊下には、バンジーたちの他に三十人ほどの生徒たちしか残っていなかった。《純情堕天使》の指揮下にあった生徒は百人以上はいたはずだから、西側に配置されているプリクラたちの元も同じような《被害》を受けたのだとしたら、同等の戦力しか残っていないかもしれない。となると、約三分の一が負傷、あるいはそれらの生徒を体育館に運び込む役割を担ったことになる。
バンジーがやるべきことは指揮下にある生徒たちの士気をこれ以上低下させないことと、部隊の再編成だった。しかし、自分にそんなことができるのだろうか。ダチひとり、救えなかった自分に――。
「バンジー」アキチャに声をかけられ、バンジーはハッとしたように顔を向けた。
「どうした?」
「とりあえず一階に戻ろう。あたしはプリクラのところに行って指示をもらってくる」
「そうだな、それがいい」バンジーはアキチャの肩を軽く叩いた。「頼んだぞ」
アキチャはバンジーに向けて親指を立てると、廊下を小走りで駆けていった。
体育館へと通じる重い扉の前で腕組みをしているチョウコクは、飛び交っていた鳥たちの動きが突然おとなしくなった瞬間を見つめても、特に反応はしなかった。世の中にはバカげたことがたくさん起きる。その理由なんて考えても仕方ないし、ひとつひとつに関わったところで時間の無駄だ。このけたたましい騒ぎになにかの理屈があろうと、それを自分が知る必要はない。知ったところでチョウコクの人生になんの影響ももたらさない。
もちろん、こんな騒ぎは、これから派手な祭りの余興としても歓迎すべきことではないし、迷惑だった。なによりも戦力が削がれてしまったことにチョウコクは腹を立てていた。自分が背にしている扉は、まだ本格的な戦いの前だというのに何度も開かれ、負傷した生徒たちが何十人と体育館へ運び込まれた。これで生徒会の立案した作戦は初っ端から変更を余儀なくされるだろう。もっともすべてが作戦通りにいく戦いなど、チョウコクの知る限り一度もありはしなかったが。
「鳥が……」かたわらの学ランが天井を見上げ、つぶやいた。
「瑣末なことだ」
「ふん……」学ランは笑った。「あんたらしいな」
「とはいえ、たかが鳥ごときに大騒ぎした結果がこのざまだ」チョウコクは顎で扉の向こうの体育館を示した。「結果は瑣末なことじゃない」
いま、鳥たちはほとんどが校舎の中から外へと飛んで行った。それでも取り残された数羽はまだ廊下の天井付近を宛てもなく飛んでいる。
そして床には鳥の死骸が散乱していた。抜け落ちた無数の羽、ちぎれた脚、踏み潰れた頭や体の一部、飛び散った血……。廊下の床にはあちこちに血溜まりを踏んだ靴底が滑った跡が残されていた。
《無惨なことをする……》
チョウコクは怒りよりも憐れみを感じた。
それを感じ取ったのか、学ランも渋い顔になった。「どうするつもりだ」
「指示を待つ」
「打って出ねえのか」学ランが、今度は不満そうな表情を浮かべた。「推測でしかねえけど、この鳥の大騒ぎにはアリ女の連中が絡んでいるにちがいねえ。どんな方法でこんなことをしでかしたのかまではわからねえが。で、それが収まったってことは、いよいよあいつらが来るってことだ。それでも指示を待つのか」
「今回は、生徒会の指揮に従うと決めたからな」
「堅てぇんだな」
「私は功績を上げたいわけじゃない。少しでも、この学園に恩返しがしたいだけなんだ」
「――前田、か……」
もし前田敦子と拳を交わさなかったら、もし前田敦子の生き様を目にしなかったら――チョウコクは今回の戦いに参加しなかっただろう。クールを気取り、遠くから部外者のようにみんなを見ているだけだったにちがいない。
自分は、学ランとはちがった意味で前田敦子に惚れているのかもしれない――とチョウコクは思う。あの小さな体しか持たない女に教えられたことは数多い。
「あいつはおれが惚れた女だ。あんたが同じ気持ちになっても不思議はない」
「嫉妬しないのか」
「そういうんじゃねえよ、あいつへの気持ちは……」学ランはどこか寂しげな表情になった。「あいつは人を惹きつけちまうんだ。それをおれがどうこうできるわけもないし、したいとも思わねえ。それに――いや、なんでもねえ」
ふと、学ランの小さく端正な顔に陰りが見えた気がした。
「どうした――水臭いな」無理に聞き出そうとは思わないが、いままで見たことのない表情の学ランに、チョウコクは尋常ならざるものを感じた。「話したいことがあるなら聴くぜ。こんなときだからこそ、言えることもあるんじゃねえか」
「――ああ、たしかにな……そうかもしれねえ」学ランは、今はもう鳥のいない天井を見上げた。「――名古屋に行くんだ。親の仕事の都合でね。この学園とは今学期でお別れだ」
「いつ決まったんだ?」
「二三日前だ。突然で、なにもオレに相談はない。それどころか、電話で知らされたんだ。こんな大事な話なのに……」
ひどい話だ――と言おうとして、チョウコクは思いとどまった。いくらそうだとしても、ダチの親を悪く言いたくない。
かといって、黙っているのもどうかと思い、チョウコクは低く「ああ……」と頷いた。
「まあ、おれにはもう、どうしようもないことだし、あんたも今年でこの学園を卒業するしな、未練はねえよ。けど……あいつのことは心配だ」
「大丈夫さ。あいつは強い女だ」
チョウコクがそう言ったとき、体育館へ通じる扉が、外側からゆっくりと開いた。
現れたのはネズミだった。
チョウコクはこの女が嫌いだった。アダ名の通り、ちょこまかと動きまわり、その理由もわからない。どうせろくでもないことを考えているのにちがいないが、尻尾をつかませないずる賢さが余計に腹が立つ。そうならないための唯一の方法は、関わらないことだ。
だからチョウコクは、ネズミのやや焦ったような表情を見ても、感情を動かさなかった。どこに行くつもりかは知らないが、それはチョウコクには関係のない場所にちがいなかった。
チョウコクも学ランも、ネズミには声をかけなかった。ネズミは二人を交互に見ると、したかどうかもわからないくらい小さな会釈をして、廊下の向こうにある階段を登っていった。
「――ま。そんなわけでだ……」なにかを吹っ切るように、学ランは言った。「今日は、暴れ納めとでも言うべきかな。派手にやらせてもらおうぜ」
学ランは顔より少し高い位置まで右手を上げた。
チョウコクはその意味に困惑したが、やがてそれに思い当たり、少し照れた笑みを浮かべてハイタッチをした。
セーラー服の上から、背中に龍と富士と花が刺繍されたダークグリーンのスカジャンを着た少女は丘の上で足を止め、遥か向こうにある馬路須加女学園を見つめた。
この小さな丘は、少女の自宅から学園へと向かう通学路だった。毎日ここから学園を見て、ゆっくりと歩いて行くのが日課になっている。しかし、ここ十日間ほどは自宅と優子が入院している病院を行ったり来たりする毎日で、この丘からの眺めは久しぶりのものだった。進級への成績が足りず、今度の補修テストで赤点を取ったら、留年することになってしまうため、勉強を優子に見てもらっていたのだ。出席日数はぎりぎり足りていた。優子のおかげで、なんとか最低限の理解はできた。あとは来週のあたまにあるテストで合格すればいい。
本当は、留年しようが進級しようが、どうでもよかった。それでも苦手で大嫌いな勉強をしたのは優子が望んだからだ。テキストを理解し、問題を解き、正解を出すと、優子はとても喜んでくれた。
優子とのキスもクンニも好きだったが、いちばん好きなのは、柔らかくて大きな優子の胸に顔をうずめ、頭をなでなでしてもらうことだった。あれほど幸せな時間はない。優子の慈愛に満ちた抱擁に包まれると、少女は心の底から落ち着いた。優子の胸は、少女の遠い昔の記憶を呼び覚ます。まだ言葉も覚えていなかったころに授乳をしてくれた母親――そしていまはいない、その存在を。
今朝、その優子から電話があった。
「学園に来いよ」優子の声はなぜか興奮していた。「ひさしぶりの祭りだ。相手を殺さない限り、好きに暴れていい」
《相手》がだれを指すのかはよくわからなかったが、暴れていいことだけははっきりと理解できた。前田敦子とのタイマンから、しばらく拳を使っていなかった。ケンカよりも勉強を優先しなくてはいけなかったからだ。
でも優子は言った――暴れていい、と。
少女は馬路須加女学園から視線を移し、丘の向こうへと続く道を見た。
《殺さない限り、なにをしてもいい》――なんて素敵な言葉なんだろう。
少女は指の爪を噛みながら、フフフと笑い、再び歩き出した。
【つづく】
廊下と階段を自在に飛び交い、生徒たちを恐怖とパニックに陥らせていた鳥たちの動きが、一斉に――まるで電池が切れたかのようにおとなしくなった、その瞬間をバンジーは見ていた。
廊下の天井付近を、バサバサと大げさに羽ばたいて飛んでいたカラスも、狂ったように翼を上下し、羽をあちこちに散乱していたハトも、統制なく飛び回り、そこら中にぶつかっては床に落ちたスズメも、その動きを止め、すーっと音もなく滑空し始めた。割れた窓を見つけた鳥は、そこから外へと
いったい、鳥たちになにが起きていたのか、あるいはこれからなにかが起きようとしているのか、バンジーにはまったく見当がつかなかったが、事態が推移しようとしていることはまちがいないなさそうだった。
回りにいる生徒たちもざわつき始めた。鳥嫌いの連中も、鳥たちが不気味な鳴き声を上げなくなったことで、少しずつ冷静さを取り戻しつつあるようだった。
生徒たちの動きを制したいバンジーたちにとっては歓迎するべき変化だが、まだ油断はできない。バンジーはかたわらにいたウナギに言った。「なんだかわかんねぇが静かになったな……でも、気を抜くなよ」
「ああ。わかってる」ウナギは頷いた。
いま二階の廊下には、バンジーたちの他に三十人ほどの生徒たちしか残っていなかった。《純情堕天使》の指揮下にあった生徒は百人以上はいたはずだから、西側に配置されているプリクラたちの元も同じような《被害》を受けたのだとしたら、同等の戦力しか残っていないかもしれない。となると、約三分の一が負傷、あるいはそれらの生徒を体育館に運び込む役割を担ったことになる。
バンジーがやるべきことは指揮下にある生徒たちの士気をこれ以上低下させないことと、部隊の再編成だった。しかし、自分にそんなことができるのだろうか。ダチひとり、救えなかった自分に――。
「バンジー」アキチャに声をかけられ、バンジーはハッとしたように顔を向けた。
「どうした?」
「とりあえず一階に戻ろう。あたしはプリクラのところに行って指示をもらってくる」
「そうだな、それがいい」バンジーはアキチャの肩を軽く叩いた。「頼んだぞ」
アキチャはバンジーに向けて親指を立てると、廊下を小走りで駆けていった。
体育館へと通じる重い扉の前で腕組みをしているチョウコクは、飛び交っていた鳥たちの動きが突然おとなしくなった瞬間を見つめても、特に反応はしなかった。世の中にはバカげたことがたくさん起きる。その理由なんて考えても仕方ないし、ひとつひとつに関わったところで時間の無駄だ。このけたたましい騒ぎになにかの理屈があろうと、それを自分が知る必要はない。知ったところでチョウコクの人生になんの影響ももたらさない。
もちろん、こんな騒ぎは、これから派手な祭りの余興としても歓迎すべきことではないし、迷惑だった。なによりも戦力が削がれてしまったことにチョウコクは腹を立てていた。自分が背にしている扉は、まだ本格的な戦いの前だというのに何度も開かれ、負傷した生徒たちが何十人と体育館へ運び込まれた。これで生徒会の立案した作戦は初っ端から変更を余儀なくされるだろう。もっともすべてが作戦通りにいく戦いなど、チョウコクの知る限り一度もありはしなかったが。
「鳥が……」かたわらの学ランが天井を見上げ、つぶやいた。
「瑣末なことだ」
「ふん……」学ランは笑った。「あんたらしいな」
「とはいえ、たかが鳥ごときに大騒ぎした結果がこのざまだ」チョウコクは顎で扉の向こうの体育館を示した。「結果は瑣末なことじゃない」
いま、鳥たちはほとんどが校舎の中から外へと飛んで行った。それでも取り残された数羽はまだ廊下の天井付近を宛てもなく飛んでいる。
そして床には鳥の死骸が散乱していた。抜け落ちた無数の羽、ちぎれた脚、踏み潰れた頭や体の一部、飛び散った血……。廊下の床にはあちこちに血溜まりを踏んだ靴底が滑った跡が残されていた。
《無惨なことをする……》
チョウコクは怒りよりも憐れみを感じた。
それを感じ取ったのか、学ランも渋い顔になった。「どうするつもりだ」
「指示を待つ」
「打って出ねえのか」学ランが、今度は不満そうな表情を浮かべた。「推測でしかねえけど、この鳥の大騒ぎにはアリ女の連中が絡んでいるにちがいねえ。どんな方法でこんなことをしでかしたのかまではわからねえが。で、それが収まったってことは、いよいよあいつらが来るってことだ。それでも指示を待つのか」
「今回は、生徒会の指揮に従うと決めたからな」
「堅てぇんだな」
「私は功績を上げたいわけじゃない。少しでも、この学園に恩返しがしたいだけなんだ」
「――前田、か……」
もし前田敦子と拳を交わさなかったら、もし前田敦子の生き様を目にしなかったら――チョウコクは今回の戦いに参加しなかっただろう。クールを気取り、遠くから部外者のようにみんなを見ているだけだったにちがいない。
自分は、学ランとはちがった意味で前田敦子に惚れているのかもしれない――とチョウコクは思う。あの小さな体しか持たない女に教えられたことは数多い。
「あいつはおれが惚れた女だ。あんたが同じ気持ちになっても不思議はない」
「嫉妬しないのか」
「そういうんじゃねえよ、あいつへの気持ちは……」学ランはどこか寂しげな表情になった。「あいつは人を惹きつけちまうんだ。それをおれがどうこうできるわけもないし、したいとも思わねえ。それに――いや、なんでもねえ」
ふと、学ランの小さく端正な顔に陰りが見えた気がした。
「どうした――水臭いな」無理に聞き出そうとは思わないが、いままで見たことのない表情の学ランに、チョウコクは尋常ならざるものを感じた。「話したいことがあるなら聴くぜ。こんなときだからこそ、言えることもあるんじゃねえか」
「――ああ、たしかにな……そうかもしれねえ」学ランは、今はもう鳥のいない天井を見上げた。「――名古屋に行くんだ。親の仕事の都合でね。この学園とは今学期でお別れだ」
「いつ決まったんだ?」
「二三日前だ。突然で、なにもオレに相談はない。それどころか、電話で知らされたんだ。こんな大事な話なのに……」
ひどい話だ――と言おうとして、チョウコクは思いとどまった。いくらそうだとしても、ダチの親を悪く言いたくない。
かといって、黙っているのもどうかと思い、チョウコクは低く「ああ……」と頷いた。
「まあ、おれにはもう、どうしようもないことだし、あんたも今年でこの学園を卒業するしな、未練はねえよ。けど……あいつのことは心配だ」
「大丈夫さ。あいつは強い女だ」
チョウコクがそう言ったとき、体育館へ通じる扉が、外側からゆっくりと開いた。
現れたのはネズミだった。
チョウコクはこの女が嫌いだった。アダ名の通り、ちょこまかと動きまわり、その理由もわからない。どうせろくでもないことを考えているのにちがいないが、尻尾をつかませないずる賢さが余計に腹が立つ。そうならないための唯一の方法は、関わらないことだ。
だからチョウコクは、ネズミのやや焦ったような表情を見ても、感情を動かさなかった。どこに行くつもりかは知らないが、それはチョウコクには関係のない場所にちがいなかった。
チョウコクも学ランも、ネズミには声をかけなかった。ネズミは二人を交互に見ると、したかどうかもわからないくらい小さな会釈をして、廊下の向こうにある階段を登っていった。
「――ま。そんなわけでだ……」なにかを吹っ切るように、学ランは言った。「今日は、暴れ納めとでも言うべきかな。派手にやらせてもらおうぜ」
学ランは顔より少し高い位置まで右手を上げた。
チョウコクはその意味に困惑したが、やがてそれに思い当たり、少し照れた笑みを浮かべてハイタッチをした。
セーラー服の上から、背中に龍と富士と花が刺繍されたダークグリーンのスカジャンを着た少女は丘の上で足を止め、遥か向こうにある馬路須加女学園を見つめた。
この小さな丘は、少女の自宅から学園へと向かう通学路だった。毎日ここから学園を見て、ゆっくりと歩いて行くのが日課になっている。しかし、ここ十日間ほどは自宅と優子が入院している病院を行ったり来たりする毎日で、この丘からの眺めは久しぶりのものだった。進級への成績が足りず、今度の補修テストで赤点を取ったら、留年することになってしまうため、勉強を優子に見てもらっていたのだ。出席日数はぎりぎり足りていた。優子のおかげで、なんとか最低限の理解はできた。あとは来週のあたまにあるテストで合格すればいい。
本当は、留年しようが進級しようが、どうでもよかった。それでも苦手で大嫌いな勉強をしたのは優子が望んだからだ。テキストを理解し、問題を解き、正解を出すと、優子はとても喜んでくれた。
優子とのキスもクンニも好きだったが、いちばん好きなのは、柔らかくて大きな優子の胸に顔をうずめ、頭をなでなでしてもらうことだった。あれほど幸せな時間はない。優子の慈愛に満ちた抱擁に包まれると、少女は心の底から落ち着いた。優子の胸は、少女の遠い昔の記憶を呼び覚ます。まだ言葉も覚えていなかったころに授乳をしてくれた母親――そしていまはいない、その存在を。
今朝、その優子から電話があった。
「学園に来いよ」優子の声はなぜか興奮していた。「ひさしぶりの祭りだ。相手を殺さない限り、好きに暴れていい」
《相手》がだれを指すのかはよくわからなかったが、暴れていいことだけははっきりと理解できた。前田敦子とのタイマンから、しばらく拳を使っていなかった。ケンカよりも勉強を優先しなくてはいけなかったからだ。
でも優子は言った――暴れていい、と。
少女は馬路須加女学園から視線を移し、丘の向こうへと続く道を見た。
《殺さない限り、なにをしてもいい》――なんて素敵な言葉なんだろう。
少女は指の爪を噛みながら、フフフと笑い、再び歩き出した。
【つづく】
◎37thシングル選抜メンバー◎
1位 宮澤佐江
2位 渡辺麻友
3位 指原莉乃
4位 山本彩
5位 松井珠理奈
6位 松井玲奈
7位 柏木由紀
8位 生駒里奈
9位 横山由依
10位 小嶋陽菜
11位 高橋みなみ
12位 島崎遥香
13位 須田亜香里
14位 木崎ゆりあ
15位 川栄李奈
16位 宮脇咲良
◎アンダーガールズ◎
17位 渡辺美優紀
18位 柴田阿弥
19位 朝長美桜
20位 北原里英
21位 高柳明音
22位 松村香織
23位 小嶋真子
24位 峯岸みなみ
25位 山田菜々
26位 梅田彩佳
27位 高城亜樹
28位 古川愛李
29位 兒玉遥
30位 藤江れいな
31位 西野未姫
32位 田島芽瑠
◎ネクストガールズ◎
33位 薮下柊
34位 多田愛佳
35位 田野優花
36位 倉持明日香
37位 市川美織
38位 岡田奈々
39位 大場美奈
40位 入山杏奈
41位 木本花音
42位 大矢真那
43位 上西恵
44位 岩田華怜
45位 高橋朱里
46位 斉藤真木子
47位 永尾まりや
48位 石田晴香
◎フューチャーガールズ◎
49位 北川綾巴
50位 矢倉楓子
51位 古畑奈和
52位 梅本まどか
53位 岩佐美咲
54位 東李苑
55位 武藤十夢
56位 佐藤すみれ
57位 小林亜実
58位 吉田朱里
59位 小笠原茉由
60位 渋谷凪咲
61位 松井咲子
62位 内田眞由美
63位 前田亜美
64位 磯原杏華
◎アップカミングガールズ◎
65位 上枝恵美加
66位 岩立沙穂
67位 大家志津香
68位 中西智代梨
69位 小谷里歩
70位 加藤夕夏
71位 川上千尋
72位 江籠裕奈
73位 木下有希子
74位 岸野里香
75位 島田晴香
76位 谷真理佳
77位 久代梨奈
78位 室加奈子
79位 秋吉優花
80位 谷川愛梨
◎アップカミングガールズ◎
今年から新設された枠なので、いままでにないメンツを選んでみた。大家、小谷、木下(有)、岸野、島田、谷川などの選抜クラスなのにランクインしないメンバーに、なんとかスポットが当たってほしい。あとのメンバーは完全にぼくの好み(笑)。
◎フューチャーガールズ◎
ぼくの推しの内田眞由美は、新設されたアップカミングガールズではなく、この位置以上に入ってほしい。他、SKEメンバーはよくわからないので、去年の順位を参考にした。古畑とか吉田とか、なぜ今まで圏外だったのか不思議。
◎ネクストガールズ◎
このあたりも微妙な順位すぎて、理屈を語れるほど順位付けに根拠があるわけではない。ほとんどが中堅どころだが、メディア露出の多い若いメンバーがこのあたりに来るのではないかと思う。岩田の順位が高過ぎると言われるかもしれないが、好きなので許してほしい。
◎アンダーガールズ◎
渡辺美優紀は「例の件」で人気が下降しているのではないかと思う。去年は15位だったから、落ちるとしたらこのあたりが限界か。三銃士の中では小島がいちばん上位になるのではないかと思う。岡田、西野にはパフォーマンスでは劣るが、親しみやすさでは優ると思うので。
◎37thシングル選抜メンバー◎
16位/宮脇咲良
HKTから指原以外に選抜入りしてほしいし、するとしたら彼女だと思う。最近は日に日に成長し、魅力がうなぎのぼりに上がっている。その勢いで一気にここまで来ても不思議はない。
15位/川栄李奈
AKB48の若手で選抜入りするには、ヲタ以外での知名度の高さが必要不可欠。その点、川栄ならヲタだけでなく、一般的なファンにも受けがいい。選挙がなくても、いずれ選抜常連になっていくはず。
14位/木崎ゆりあ
新天地で活動を始める木崎に、SKEヲタがエールを送らないわけがない。徐々に順位も上がってきているし、ここは大チャンスのはず。とはいえ、さすがに上にいるメンバーが強すぎるので、このくらいが限界かも。
13位/須田亜香里
去年はSKEヲタのがんばりが、まさかの選抜入りを実現させたが、今年は関ジャニの番組出演などで、それに加えて一般層からの支持も得られそう。とはいえ、以下、木崎と同じ理由でこれ以上は頭打ちなのでは?
12位/島崎遥香
去年と同じ順位で「安定のぱるる」と言われてほしいので(それだけかよ)。積極性がないため一般層からの支持はあまり得られず、したがって現状維持ということになるのではないか。
11位/高橋みなみ
高橋の努力や知名度というのはあまり関係なく、新興勢力の伸びがそれを上回るのではないかと予想した。押し出されて、このあたりに落ち着きそう。
10位/小嶋陽菜
これも高橋みなみの理屈と同じ。それでも、高橋みなみより上なのは、一般知名度の高さがあるから。
9位/横山由依
毎年順位を上げてきているし、今年はアリジナルメンバーを抜くべき。横山が高橋、小島をいつまでも抜けなければ、これからのAKBが弱体化してしまうと思うので、期待を込めてこの順位と予想した。
8位/生駒里奈
乃木坂46の最新CDの売上は45万枚ほど。この潜在力は侮れない。乃木ヲタは生駒に恥をかかせるようなことはしないだろう。SKEのエースと時限トレードをしたのだから、そのくらいの気概をみせてほしい。
7位/柏木由紀
本来はセンターを獲ってもおかしくないが、何度かの機会にそれをモノにできなかったのが痛い。アイドルとしての最盛が過ぎようとしているというわけではないが、これより上位のメンバーに勢いがあるため、割りを食うかたちになるのではないか。
6位/松井玲奈
玲奈ヲタには申し訳ないが、やはり、玲奈は珠理奈には勝てないと思う。越えられない年齢の壁が大きい。天才型の珠理奈のパフォーマンスが高すぎるため、努力型の玲奈には越えられないような…。
5位/松井珠理奈
順当にいけば、いつかは一位になる資質と実力がある。しかし、今はまだ、なんだかんだ言ってもAKBが強い。その壁を壊せるはずの珠理奈であっても、今年はこれより上位が強すぎる。
4位/山本彩
とにかく握手会人気がすごい。劇場盤をたくさん買うヲタが想像以上にいるのではないか。神7入りしても、なんの不思議もない。
3位/指原莉乃
競馬にたとえると、去年は無警戒のまま逃げ、他の騎手たちも「いずれ足がなくなるだろう」と高をくくっていたからこその1位だったと思う。さすがに今年はまゆゆヲタも突っ込んでくるだろう。そう簡単にはハナを奪えないはず。
2位/渡辺麻友
グループでいちばんかわいい子はセンターにいるべきではない、というのがぼくの理論なので、まゆゆは脇を固めるべきだし、柏木同様、何度もセンターを獲る位置にいたのに獲れなかったのは残念。
1位/宮澤佐江
まず考えたのは、大島優子に投票された13万票の行方とその意味。ヲタが約半分だと考えても7万票ほどは浮く。ぼくはこれが「初代チームK」に流れたら面白いと考えた。となると、それに適う、もっともふさわしいメンバーは彼女だ。
いま初代チームKのメンバーは梅田彩佳、小林香菜、宮澤佐江の三人のみ。この中のだれかに「チームK魂」を託すとしたら、いちばんの適任は宮澤佐江だろう。彼女が与えられた試練の数々と、いま彼女が立っている「場所」に思いを馳せるなら、ここで応援しないで、いつ応援するのか。
去年、宮澤佐江が獲得した票数は約6万6000。ここに7万票が加わると約14万票となる。指原への票が一割減れば13万票となり、宮澤佐江に勝機はある。すべてが理想通りにいくことが前提になってはいるものの、決して無謀な予想ではないと思う。
■速報前の予想なので、めちゃくちゃハズしてるかも…(笑)。
1位 宮澤佐江
2位 渡辺麻友
3位 指原莉乃
4位 山本彩
5位 松井珠理奈
6位 松井玲奈
7位 柏木由紀
8位 生駒里奈
9位 横山由依
10位 小嶋陽菜
11位 高橋みなみ
12位 島崎遥香
13位 須田亜香里
14位 木崎ゆりあ
15位 川栄李奈
16位 宮脇咲良
◎アンダーガールズ◎
17位 渡辺美優紀
18位 柴田阿弥
19位 朝長美桜
20位 北原里英
21位 高柳明音
22位 松村香織
23位 小嶋真子
24位 峯岸みなみ
25位 山田菜々
26位 梅田彩佳
27位 高城亜樹
28位 古川愛李
29位 兒玉遥
30位 藤江れいな
31位 西野未姫
32位 田島芽瑠
◎ネクストガールズ◎
33位 薮下柊
34位 多田愛佳
35位 田野優花
36位 倉持明日香
37位 市川美織
38位 岡田奈々
39位 大場美奈
40位 入山杏奈
41位 木本花音
42位 大矢真那
43位 上西恵
44位 岩田華怜
45位 高橋朱里
46位 斉藤真木子
47位 永尾まりや
48位 石田晴香
◎フューチャーガールズ◎
49位 北川綾巴
50位 矢倉楓子
51位 古畑奈和
52位 梅本まどか
53位 岩佐美咲
54位 東李苑
55位 武藤十夢
56位 佐藤すみれ
57位 小林亜実
58位 吉田朱里
59位 小笠原茉由
60位 渋谷凪咲
61位 松井咲子
62位 内田眞由美
63位 前田亜美
64位 磯原杏華
◎アップカミングガールズ◎
65位 上枝恵美加
66位 岩立沙穂
67位 大家志津香
68位 中西智代梨
69位 小谷里歩
70位 加藤夕夏
71位 川上千尋
72位 江籠裕奈
73位 木下有希子
74位 岸野里香
75位 島田晴香
76位 谷真理佳
77位 久代梨奈
78位 室加奈子
79位 秋吉優花
80位 谷川愛梨
◎アップカミングガールズ◎
今年から新設された枠なので、いままでにないメンツを選んでみた。大家、小谷、木下(有)、岸野、島田、谷川などの選抜クラスなのにランクインしないメンバーに、なんとかスポットが当たってほしい。あとのメンバーは完全にぼくの好み(笑)。
◎フューチャーガールズ◎
ぼくの推しの内田眞由美は、新設されたアップカミングガールズではなく、この位置以上に入ってほしい。他、SKEメンバーはよくわからないので、去年の順位を参考にした。古畑とか吉田とか、なぜ今まで圏外だったのか不思議。
◎ネクストガールズ◎
このあたりも微妙な順位すぎて、理屈を語れるほど順位付けに根拠があるわけではない。ほとんどが中堅どころだが、メディア露出の多い若いメンバーがこのあたりに来るのではないかと思う。岩田の順位が高過ぎると言われるかもしれないが、好きなので許してほしい。
◎アンダーガールズ◎
渡辺美優紀は「例の件」で人気が下降しているのではないかと思う。去年は15位だったから、落ちるとしたらこのあたりが限界か。三銃士の中では小島がいちばん上位になるのではないかと思う。岡田、西野にはパフォーマンスでは劣るが、親しみやすさでは優ると思うので。
◎37thシングル選抜メンバー◎
16位/宮脇咲良
HKTから指原以外に選抜入りしてほしいし、するとしたら彼女だと思う。最近は日に日に成長し、魅力がうなぎのぼりに上がっている。その勢いで一気にここまで来ても不思議はない。
15位/川栄李奈
AKB48の若手で選抜入りするには、ヲタ以外での知名度の高さが必要不可欠。その点、川栄ならヲタだけでなく、一般的なファンにも受けがいい。選挙がなくても、いずれ選抜常連になっていくはず。
14位/木崎ゆりあ
新天地で活動を始める木崎に、SKEヲタがエールを送らないわけがない。徐々に順位も上がってきているし、ここは大チャンスのはず。とはいえ、さすがに上にいるメンバーが強すぎるので、このくらいが限界かも。
13位/須田亜香里
去年はSKEヲタのがんばりが、まさかの選抜入りを実現させたが、今年は関ジャニの番組出演などで、それに加えて一般層からの支持も得られそう。とはいえ、以下、木崎と同じ理由でこれ以上は頭打ちなのでは?
12位/島崎遥香
去年と同じ順位で「安定のぱるる」と言われてほしいので(それだけかよ)。積極性がないため一般層からの支持はあまり得られず、したがって現状維持ということになるのではないか。
11位/高橋みなみ
高橋の努力や知名度というのはあまり関係なく、新興勢力の伸びがそれを上回るのではないかと予想した。押し出されて、このあたりに落ち着きそう。
10位/小嶋陽菜
これも高橋みなみの理屈と同じ。それでも、高橋みなみより上なのは、一般知名度の高さがあるから。
9位/横山由依
毎年順位を上げてきているし、今年はアリジナルメンバーを抜くべき。横山が高橋、小島をいつまでも抜けなければ、これからのAKBが弱体化してしまうと思うので、期待を込めてこの順位と予想した。
8位/生駒里奈
乃木坂46の最新CDの売上は45万枚ほど。この潜在力は侮れない。乃木ヲタは生駒に恥をかかせるようなことはしないだろう。SKEのエースと時限トレードをしたのだから、そのくらいの気概をみせてほしい。
7位/柏木由紀
本来はセンターを獲ってもおかしくないが、何度かの機会にそれをモノにできなかったのが痛い。アイドルとしての最盛が過ぎようとしているというわけではないが、これより上位のメンバーに勢いがあるため、割りを食うかたちになるのではないか。
6位/松井玲奈
玲奈ヲタには申し訳ないが、やはり、玲奈は珠理奈には勝てないと思う。越えられない年齢の壁が大きい。天才型の珠理奈のパフォーマンスが高すぎるため、努力型の玲奈には越えられないような…。
5位/松井珠理奈
順当にいけば、いつかは一位になる資質と実力がある。しかし、今はまだ、なんだかんだ言ってもAKBが強い。その壁を壊せるはずの珠理奈であっても、今年はこれより上位が強すぎる。
4位/山本彩
とにかく握手会人気がすごい。劇場盤をたくさん買うヲタが想像以上にいるのではないか。神7入りしても、なんの不思議もない。
3位/指原莉乃
競馬にたとえると、去年は無警戒のまま逃げ、他の騎手たちも「いずれ足がなくなるだろう」と高をくくっていたからこその1位だったと思う。さすがに今年はまゆゆヲタも突っ込んでくるだろう。そう簡単にはハナを奪えないはず。
2位/渡辺麻友
グループでいちばんかわいい子はセンターにいるべきではない、というのがぼくの理論なので、まゆゆは脇を固めるべきだし、柏木同様、何度もセンターを獲る位置にいたのに獲れなかったのは残念。
1位/宮澤佐江
まず考えたのは、大島優子に投票された13万票の行方とその意味。ヲタが約半分だと考えても7万票ほどは浮く。ぼくはこれが「初代チームK」に流れたら面白いと考えた。となると、それに適う、もっともふさわしいメンバーは彼女だ。
いま初代チームKのメンバーは梅田彩佳、小林香菜、宮澤佐江の三人のみ。この中のだれかに「チームK魂」を託すとしたら、いちばんの適任は宮澤佐江だろう。彼女が与えられた試練の数々と、いま彼女が立っている「場所」に思いを馳せるなら、ここで応援しないで、いつ応援するのか。
去年、宮澤佐江が獲得した票数は約6万6000。ここに7万票が加わると約14万票となる。指原への票が一割減れば13万票となり、宮澤佐江に勝機はある。すべてが理想通りにいくことが前提になってはいるものの、決して無謀な予想ではないと思う。
■速報前の予想なので、めちゃくちゃハズしてるかも…(笑)。