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『マジすか学園vsありえね女子高 AKB48×アイドリング!!!』 第71話

 29, 2014 22:52
 ■決戦―7■



 階段を駆け登り、押し寄せる生徒の群れの前で、マユミは右手で山本彩を、左手で渡辺美優紀の手を離さないよう、力強く握っていた。
 校内に侵入した鳥どものせいで、一、二年生たちはパニック状態に陥っていた。これだけあちこちでガラスが割れ、上の階からも鳥どもが飛来してきているのだから、一階から離れたところで意味はないのだが、一度パニックの火が点いてしまった人間には、そんな判断はできないのだろう。その結果、彼女たちは、手をつないでバリケードをつくっている《純情堕天使》メンバーたちを突破しようと、必死の形相で押しくらまんじゅうをしているというわけだった。
 プリクラ率いる《純情堕天使》六人と難波からやってきた三人は、二階の廊下の手前の階段で、殺到する生徒たちを静止していた。少し前に西側の階段の向こうから、わーっという波のような声とたくさんの足音が聞こえてきた。あちらは《チームホルモン》が守っていたはずだが、あの人数では止められなかったのだろう。
 悲鳴と怒号の中、マユミはこの状態をいつまで保てるのかと考えていた。相手の数のほうが圧倒的に多いのだから、このままでは突破されるのは時間の問題だった。
 加えて、難波から来た三人も気がかりだった。彼女たちはほとんどなにも知らされないまま、ここに立ち、バリケードとして使われている。来年からマジ女の生徒になるとはいえ、それがここで踏ん張るモチベーションになるのかどうか……。バリケードが崩壊するとしたら、そこからではないかとマユミは思った。
 すると、まるでマユミの気持ちを察し、反論でもするかのように、山本彩が声を張り上げた。「おいっ、このアホんだらどもっ」
 声は太く、そして大きかった。
 山本彩の一喝は、《純情堕天使》のメンバーと群衆の最前列で怒鳴りあっていた生徒たちだけでなく、踊り場にいる者たちにも届いたようだった。あれほど騒がしかったこの場が、一瞬で凍りついたように静まった。それが聞き慣れない関西弁の響きによるものなのか、それとも――来たばかりだというのに、こんな状況下で先輩たちに向かって怒号を上げる山本彩という女の持つ迫力に押されたのかはわからなかったが、彼女がたった一瞬でこの場を支配したことは事実だった。
 「さっきから黙ってりゃ、クっソしょうもない大騒ぎしやがって、なにを鳥ごときにビビっとるんや。おまえらそれでもオメコついとんのか?」
 本来であれば、たかが――それも見知らぬ――中坊にデカい口を叩れることなど、マジ女にとっては屈辱的であり、あってはならない出来事だった。
 「わー、さや姉、かっこいい……」
 渡辺美優紀が関西訛りの発音で、胸の前で音を立てずに拍手をした。この空気の読めなさは――いや、そもそもそんなことなど意に介するタイプではないのかもしれない――山本彩とは別の意味で、渡辺美優紀もまた、人並み外れた存在感をもっていた。
 「残念ながら、こいつらの言うとおりだ」人間バリケードの端にいたプリクラが大きな声を出した。「とにかく一階に戻れ。怪我をして取り残されてるやつらもいるだろう。そいつらを体育館に運ぶんだ。さあ、さっさとしろッ」
 殺気立っていた生徒たちの中には、舌打ちする者や、山本彩にガンを飛ばす者などもいて、場はざわめいているものの、ほとんどはプリクラの号令に渋々従った。
 そして不思議なことに、鳥どもまでもが山本彩の一喝にビビったのか、その姿を消していた。
 「そこの中坊……山本彩とか言ったな」プリクラの視線には、マユミの隣の山本彩を射るような鋭さがあった。「とりあえず礼を言う。大した度胸だな」
 「なんてことあらへんで、先輩さん」
 さらっと言ってのけた山本彩のその面持ちに、マユミはある予感をいだいた。それは山本彩がいずれ、マジ女のてっぺんに上りつめようとするだろうというものだった。



  【つづく】

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