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札幌・小樽旅行記その10。

 11, 2006 00:00


 列車は海岸線を走る。鉛色の空の下、寒々とした海にサーファーたちが浮かんでいるのには驚いた。着ているのはドライスーツだろうが、見るからに寒そうだ。よほど好きなんだろうなあ。
 札幌-小樽間は約30分。みんな、意外と早いね、と言っていた。
 駅のコインロッカーに荷物を入れ、おれは愛機のデジカメ、ペンタックス*istDだけを持ち、外に出た。おれたち五人は、まずは小樽駅前市場、通称三角市場へと向かった。ここは昨日の二条市場とはちがって、建物の中にお店が並んでいる。狭くて長い、下り坂になっている通路が真ん中にあり、その両脇に小さな商店がある。海産物を売っているお店がほとんどだが、食堂みたいな食べ物屋もあった。なにか食べようかと思ったが、みんなに聞くとまだお腹が空いていないと抜かしている。スープカレー程度でおなかいっぱいになっているとは情けない。しかし、かくいうおれも、実はそんなにお腹は空いていなかった。スープカレーがまだ腹に残っているのだ(笑)。でも、せっかくこういう場所に来たのだから、ちょっと無理してでも食べたいではないか。だが、メニューにあるのは、どれも本格的に食事をするようなボリュームのものばかりで、ちょっと食してみたいなどという舐めた態度で入ったら最後、トンデモないことになりそうだった。
 結局、うろうろしているうちに時間もなくなり、おれはなにも食べずに市場の外に出た。Hは、とある店のオヤジの、カニについての薀蓄を聞かされて、自宅へのお土産としてタラバカニをクール宅配便で送るとのこと。このオヤジは、たしかにいい味を出していて、まるで地方競馬の予想屋みたいだった。

 市場を出たぼくらは、ぶらぶらと歩き、アーケード商店街に入った。無駄に通路が広い。中野サンモールの何倍あるだろうか。十年以上前に行った尾道のアーケード商店街も、こんなふうに広かった。地方のアーケード商店街というのは道幅が広いものなのだろうか。
 天気が悪いからか、商店街にはあまり人気がなく、どこかのお店の子供だろう、通路でボール遊びをしている。静かな商店街に、その子供の歓声が響いて、物悲しかった。
 そんな光景の中、ふと、とあるお店が目に付いた。「ぱんじゅう」と書かれた、汚い暖簾(失礼っ)があり、ガラスの向こうでは、ちょび髭をたくわえたおじさんが、なにかを作っている。食い物だ。直感した。
「ちと、あの店行ってみる。だれか行く?」と、おれはみんなに訊ねたが、だれも行かないと言う。仕方なく、おれは一人で店に入った。
 ぱんじゅう、とは、東京で言うところの大判焼(もしくは今川焼)を小さく、そして皮を薄くしたもので、中にはあんこがたっぷり入っている。形状はたこ焼きみたいだ。黒ぶち+丸メガネ+ちょび髭のおじさんが「いままでに食べたことのない味だと思います」と、渋い声で言い、ぱんじゅうを紙袋に入れてくれた。おれが旅行客だとわかったのだろう。
 だが、味は思っていたほど衝撃的なものではなかった。いや、おいしいことはおいしいのだが、おじさんの一言がおれのハードルを二段ほど上げてしまったのだ。けれども、ぜひともみんなに試してほしい味である。おれのほかの四人は食べようともしなかった。もったいない。

 商店街から出ると、おれたちは港のほうにある、小樽のメインストリートを目指した。
 その途中、ホテルがあったのだが、ここにいた女性ホテルマンがめちゃくちゃ、おれのタイプだった。後藤真希を、うんと美人にした感じだ。後藤もかなりかわいいが、それ以上である。
 たまにこういうことがある。町を歩いていて、すれちがった女性のあまりの美しさにぽーっとなってしまい、声をかけたくなることが。それはナンパとか、お友達になりたいとか、そういうことではなく、そのときその人と出会えたことを、記録に残しておきたいという純粋な気持ちなのだ。
 このときも、ただ純粋に写真を撮らせてほしいと思ったが、断られたら恥ずかしいのでやめた。みんなもいるし。そもそも、おれみたいなブサイク軍軍曹に声をかけられるだけでも、その人にしてみれば迷惑な話だろう。
 軽く失恋ぽい気持ちになりながら(なんでだ)、おれはみんなとともに、先へと進んだ。

 【つづく】

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