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この日は9月の下旬ではありましたが、台風一過のせいで猛暑とまではいかないもののかなり暑く、立っているだけでも汗が噴出してきます。そんな中、見ず知らずの土地をこれから地図もなしで世田谷区役所まで行こうというのですから無謀にもほどがあります。
いま、地図で確認すると、ぼくらはこのとき世田谷区代田5丁目あたりにいたわけです。そこから環七を南下し、東急世田谷線若林駅を目指しました。文字にすれば簡単ですが、暑い中での行軍はかなり辛かった……。なんのためにこんなことをしているのか、世田谷区役所に行ったところでだれが誉めてくれるのか。限りなく浮かぶ疑問を、ぼくらは他愛のない話をすることで紛らわせました。大体がオチンチンにまつわる話というのが情けないことではありますが(笑)。
小田急線のガードをくぐり、さらに歩くと陸橋が見えてきました。このあたりは何度か車で通ったことのあるぼくは、この陸橋を超えれば世田谷線の線路が見えてくることを思い出しました。
「もうすぐで若林駅だぞ」
この陸橋を右折すると、家電量販店のコジマがありました。
「上戸さん、中で少し涼んで行きましょうよ」とK。
「涼んだら進む気力がなくなるぞ」ぼくは答えました。
「休むなら君一人でどうぞ」冷たく言い放つのはUです。
そんなわけでコジマには寄らず、信号を渡りました。するとそこに、地元の人らしき老夫婦がいました。このあたりで道を聞いておいたほうがいい、と漠然と考えていたぼくは、この二人に区役所までの道を尋ねました。
すると、この先の突き当りを左に曲がり、松蔭神社を右折すれば左手に区役所が見えてくるとのこと。さらに、男性はこう付け加えました。「バスで行けばすぐですよ」
「いえ、それはダメなんです」ぼくは言いました。「バスには乗れないもので……」
わけのわからなそうな表情を浮かべた二人に礼を言い、ぼくらは教えられた道を行くことにしました。そりゃあ、不思議に思いますよ。土曜日で役所はやっていない上に、怪しげな男三人組がバスに乗らないで歩いて行くというんですから。後に何か事件があって、あの夫婦が警察の聞き込みを受けたら、ぼくらのことを話すにちがいありません。
言われた通りに進むと、たしかに松蔭神社が見えてきました。この神社は有名ですから名前くらいは知っていましたが、想像以上に広い敷地です。
その先には、あの国士舘大学がありました。柔道の石井彗がいる大学です。
そして左を見ると、そこには古めかしい建物が――そう、ぼくらはとうとう世田谷区役所に着いたのです!!!
長かった……ぼくらは大きく息を吐きました。23区の区役所に来るのに、こんなに歩かされることになるとは……。
建物の下の日陰に入って休憩をしているあいだ、区役所の横には、まるでぼくらにあてつけをするかのように、東急バスが出たり入ったりしていました。あれに乗れば簡単にどこかの駅まで送ってくれるのです。でも、それに乗ることはできません。なぜならこれは、東急バスだからです。
疲れたといって、あまり休んでばかりいるわけにはいきません。時刻はもう10時30分。3時間半で二つしかクリアできていないのです。回るべき役所は、あと21もあるんですから(笑)。
三度目の、運命の時です。
再びカードを引くのはKくん。「なんでおれなんですか」という文句は聞かなかったことにして、ぼくとUくんは「いいから早く引け」と催促しました。なぜKくんに引かせるかというと、トンデモない場所を引いたときにネチネチと文句を言う相手として最適な人間だからです。
そしてUくんがシャッフルしたカードの中から、Kが引いた一枚には
江東
という文字が書かれていました。
……つづく
いま、地図で確認すると、ぼくらはこのとき世田谷区代田5丁目あたりにいたわけです。そこから環七を南下し、東急世田谷線若林駅を目指しました。文字にすれば簡単ですが、暑い中での行軍はかなり辛かった……。なんのためにこんなことをしているのか、世田谷区役所に行ったところでだれが誉めてくれるのか。限りなく浮かぶ疑問を、ぼくらは他愛のない話をすることで紛らわせました。大体がオチンチンにまつわる話というのが情けないことではありますが(笑)。
小田急線のガードをくぐり、さらに歩くと陸橋が見えてきました。このあたりは何度か車で通ったことのあるぼくは、この陸橋を超えれば世田谷線の線路が見えてくることを思い出しました。
「もうすぐで若林駅だぞ」
この陸橋を右折すると、家電量販店のコジマがありました。
「上戸さん、中で少し涼んで行きましょうよ」とK。
「涼んだら進む気力がなくなるぞ」ぼくは答えました。
「休むなら君一人でどうぞ」冷たく言い放つのはUです。
そんなわけでコジマには寄らず、信号を渡りました。するとそこに、地元の人らしき老夫婦がいました。このあたりで道を聞いておいたほうがいい、と漠然と考えていたぼくは、この二人に区役所までの道を尋ねました。
すると、この先の突き当りを左に曲がり、松蔭神社を右折すれば左手に区役所が見えてくるとのこと。さらに、男性はこう付け加えました。「バスで行けばすぐですよ」
「いえ、それはダメなんです」ぼくは言いました。「バスには乗れないもので……」
わけのわからなそうな表情を浮かべた二人に礼を言い、ぼくらは教えられた道を行くことにしました。そりゃあ、不思議に思いますよ。土曜日で役所はやっていない上に、怪しげな男三人組がバスに乗らないで歩いて行くというんですから。後に何か事件があって、あの夫婦が警察の聞き込みを受けたら、ぼくらのことを話すにちがいありません。
言われた通りに進むと、たしかに松蔭神社が見えてきました。この神社は有名ですから名前くらいは知っていましたが、想像以上に広い敷地です。
その先には、あの国士舘大学がありました。柔道の石井彗がいる大学です。
そして左を見ると、そこには古めかしい建物が――そう、ぼくらはとうとう世田谷区役所に着いたのです!!!
長かった……ぼくらは大きく息を吐きました。23区の区役所に来るのに、こんなに歩かされることになるとは……。
建物の下の日陰に入って休憩をしているあいだ、区役所の横には、まるでぼくらにあてつけをするかのように、東急バスが出たり入ったりしていました。あれに乗れば簡単にどこかの駅まで送ってくれるのです。でも、それに乗ることはできません。なぜならこれは、東急バスだからです。
疲れたといって、あまり休んでばかりいるわけにはいきません。時刻はもう10時30分。3時間半で二つしかクリアできていないのです。回るべき役所は、あと21もあるんですから(笑)。
三度目の、運命の時です。
再びカードを引くのはKくん。「なんでおれなんですか」という文句は聞かなかったことにして、ぼくとUくんは「いいから早く引け」と催促しました。なぜKくんに引かせるかというと、トンデモない場所を引いたときにネチネチと文句を言う相手として最適な人間だからです。
そしてUくんがシャッフルしたカードの中から、Kが引いた一枚には
江東
という文字が書かれていました。
……つづく