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■台場から来た少女―2の2■
横山と外岡はチョウコクの正面から、じわじわと左右に広がっていく。
チョウコクは迷った。地下道の壁を背にするべきか、今のまま通路を背にするべきか。
壁を背にすれば、背後からの攻撃は考えなくていい。だが、挟撃されたときに戦えるスペースは狭くなる。
通路を背にすれば、360度警戒しなくてはいけないが、その分、動きやすい。
――どうする?
そうして考えているあいだにも、二人は動き続けている。
チョウコクは覚悟を決めた。壁を背にして、不意な方向からの攻撃をかわすほうがいい。
すばやく壁際に移動したチョウコクの後を、二人が追ってきた。
チョウコクは背中に壁の冷たさを感じると、両手を前に掲げ、戦闘態勢に入った。
左に外岡、右に横山……。どちらから片付けるか。二人一緒に攻撃されれば負ける。そのタイミングは何度も練習しているだろう。それならば、こちらが先に動いて先手を取るしかない。
体格的には横山が外岡を勝っている。とりあえず潰しやすい方から潰すのが鉄則だ。チョウコクは外岡をターゲットに決める。
チョウコクはやや左に向き、外岡に斜めから正対した。突っ込んでくる外岡に、カウンターの拳を入れるべく、チョウコクは構えた。
鉄拳の間合いまであと一瞬。チョウコクは右拳を肩の高さから放った。
外岡はこちらに掴みかかろうと両手を伸ばす。組み技か――チョウコクは判断し、組まれるより早く、外岡の胸に拳を叩き込むつもりだった。
それは渾身の拳――のはずだった。
しかし、どこかで横山からの攻撃を意識していたからか、その拳にはいつもの力が込められなかったし、注意力も散漫になっていた。
まるでこちらの攻撃を見透かしたように、外岡はすっと左に避けた。そして刹那の動きでチョウコクの、がら空きになった左手を掴む。電気が走ったような衝撃と痛みがチョウコクの左腕を襲った。
「痛(ツ)ッ……」
捩じ上げられた左腕が宙で妙な動きをしたかと思うと、チョウコクは次の瞬間に、自分の意思と無関係に体を捻らざるをえなかった。そのままの体勢でいたら、腕は肘のところで折られていたかもしれない。それほどの力とスピードだった。喧嘩慣れしていない人間ならそうなっていただろう。
気が付くと、チョウコクは外岡に背後に回りこまれていた。左腕が背中に回され、肘と手首を完全に押さえ込まれてしまっている。そしてギリギリと締め付けられた。
目の前には、左脚を高々と上げた横山。チョウコクは思わず、全開となったプリーツスカートの中に視線を移してしまった。たとえ女であっても、これほど大胆にスカートの中を露呈されては意識しなくともそれを見てしまうものだ。その意識の戸惑いが、チョウコクの心に隙を生んだ。そうでなければ、次の一撃は避けられたかもしれない。
横山の長く美しい左脚が、チョウコクの肩に振り下ろされようとしていた。
踵落としは極真空手を使う者が得意とする技で、格闘家ではアンディ・フグの決め技でもあった。横山のような身長のある者が使えばそれだけ威力は増す。
チョウコクを、その衝撃に意識が耐えられるかという恐怖が襲った。
――来るっ……。
チョウコクは体を強張らせる。
……が、横山はその脚を落としてはこなかった。真正面にチョウコクを見つめている。
少しの間が流れ、やがて外岡が口を開いた。「――ルリカ……」
「やっぱりやめるわ……」横山は脚をゆっくりと下ろしていく。チョウコクの肩を這わせるように。「神はこんな卑怯な戦い、お許しにならない」
チョウコクは安堵の息を、二人に気づかれないように漏らした。
外岡の拘束が緩んだ。チョウコクはすかさず離れたが、闘う気は失せていた。フェアに闘おうとしている者に対する敬意だった。
「ま、ルリカらしいね」外岡が笑った。先ほどまでの戦士の表情ではなく、普通の女子高生のような笑顔だった。
「あまりにあっさりしすぎだし……」横山が答える。こちらもまた、柔らかな微笑を浮かべている。
チョウコクは拍子抜けした気分と、助かった安心感と、そして結局自分は負けたのだという敗北感を味わっていた。「――わたしの、負けだ……」
「いえ、まだ結してない。そのうちあなたとは、また闘う日が来るわ」横山が言った。「そのときは1対1で」
「わたしは押さえ込まれた」
「でも1対1なら関節を取れなかったかも……」と外岡。
たしかに二人を相手にしているという状況が、外岡に易々と腕を取られた原因かもしれない。だが、2対1とか1対1とか、そういう問題ではない。本当の強さとは、そんなこととは関係ない。現に、大島優子は数十人を相手にたった一人で闘い、勝ったのだ。
「あのままならわたしは腕を折られ、倒れていた……」
悔しかった。これでは情けをかけられただけ……。
チョウコクは膝を折り、アスファルトに伏した。
なにが百人斬りだ。こんなことではラッパッパの四天王を倒すなど、はるかに叶わない……。
「それじゃあ、またね……」
その声はもはや遠く、二人のうちどちらが発したものかさえ、チョウコクには判断できなかった。
【つづく】
・某テレビドラマのパロディ小説です。パロ嫌いな人は読まないでね。
・いずれ百合な、エロい場面も出てきます。エロ嫌いな人は読まないでね。
・あとから矛盾とか出てきたらこっそり書き直します。
・著者の上戸に格闘技経験はないので、おかしな箇所があったらこっそり教えてください。こっそり書き直します。
横山と外岡はチョウコクの正面から、じわじわと左右に広がっていく。
チョウコクは迷った。地下道の壁を背にするべきか、今のまま通路を背にするべきか。
壁を背にすれば、背後からの攻撃は考えなくていい。だが、挟撃されたときに戦えるスペースは狭くなる。
通路を背にすれば、360度警戒しなくてはいけないが、その分、動きやすい。
――どうする?
そうして考えているあいだにも、二人は動き続けている。
チョウコクは覚悟を決めた。壁を背にして、不意な方向からの攻撃をかわすほうがいい。
すばやく壁際に移動したチョウコクの後を、二人が追ってきた。
チョウコクは背中に壁の冷たさを感じると、両手を前に掲げ、戦闘態勢に入った。
左に外岡、右に横山……。どちらから片付けるか。二人一緒に攻撃されれば負ける。そのタイミングは何度も練習しているだろう。それならば、こちらが先に動いて先手を取るしかない。
体格的には横山が外岡を勝っている。とりあえず潰しやすい方から潰すのが鉄則だ。チョウコクは外岡をターゲットに決める。
チョウコクはやや左に向き、外岡に斜めから正対した。突っ込んでくる外岡に、カウンターの拳を入れるべく、チョウコクは構えた。
鉄拳の間合いまであと一瞬。チョウコクは右拳を肩の高さから放った。
外岡はこちらに掴みかかろうと両手を伸ばす。組み技か――チョウコクは判断し、組まれるより早く、外岡の胸に拳を叩き込むつもりだった。
それは渾身の拳――のはずだった。
しかし、どこかで横山からの攻撃を意識していたからか、その拳にはいつもの力が込められなかったし、注意力も散漫になっていた。
まるでこちらの攻撃を見透かしたように、外岡はすっと左に避けた。そして刹那の動きでチョウコクの、がら空きになった左手を掴む。電気が走ったような衝撃と痛みがチョウコクの左腕を襲った。
「痛(ツ)ッ……」
捩じ上げられた左腕が宙で妙な動きをしたかと思うと、チョウコクは次の瞬間に、自分の意思と無関係に体を捻らざるをえなかった。そのままの体勢でいたら、腕は肘のところで折られていたかもしれない。それほどの力とスピードだった。喧嘩慣れしていない人間ならそうなっていただろう。
気が付くと、チョウコクは外岡に背後に回りこまれていた。左腕が背中に回され、肘と手首を完全に押さえ込まれてしまっている。そしてギリギリと締め付けられた。
目の前には、左脚を高々と上げた横山。チョウコクは思わず、全開となったプリーツスカートの中に視線を移してしまった。たとえ女であっても、これほど大胆にスカートの中を露呈されては意識しなくともそれを見てしまうものだ。その意識の戸惑いが、チョウコクの心に隙を生んだ。そうでなければ、次の一撃は避けられたかもしれない。
横山の長く美しい左脚が、チョウコクの肩に振り下ろされようとしていた。
踵落としは極真空手を使う者が得意とする技で、格闘家ではアンディ・フグの決め技でもあった。横山のような身長のある者が使えばそれだけ威力は増す。
チョウコクを、その衝撃に意識が耐えられるかという恐怖が襲った。
――来るっ……。
チョウコクは体を強張らせる。
……が、横山はその脚を落としてはこなかった。真正面にチョウコクを見つめている。
少しの間が流れ、やがて外岡が口を開いた。「――ルリカ……」
「やっぱりやめるわ……」横山は脚をゆっくりと下ろしていく。チョウコクの肩を這わせるように。「神はこんな卑怯な戦い、お許しにならない」
チョウコクは安堵の息を、二人に気づかれないように漏らした。
外岡の拘束が緩んだ。チョウコクはすかさず離れたが、闘う気は失せていた。フェアに闘おうとしている者に対する敬意だった。
「ま、ルリカらしいね」外岡が笑った。先ほどまでの戦士の表情ではなく、普通の女子高生のような笑顔だった。
「あまりにあっさりしすぎだし……」横山が答える。こちらもまた、柔らかな微笑を浮かべている。
チョウコクは拍子抜けした気分と、助かった安心感と、そして結局自分は負けたのだという敗北感を味わっていた。「――わたしの、負けだ……」
「いえ、まだ結してない。そのうちあなたとは、また闘う日が来るわ」横山が言った。「そのときは1対1で」
「わたしは押さえ込まれた」
「でも1対1なら関節を取れなかったかも……」と外岡。
たしかに二人を相手にしているという状況が、外岡に易々と腕を取られた原因かもしれない。だが、2対1とか1対1とか、そういう問題ではない。本当の強さとは、そんなこととは関係ない。現に、大島優子は数十人を相手にたった一人で闘い、勝ったのだ。
「あのままならわたしは腕を折られ、倒れていた……」
悔しかった。これでは情けをかけられただけ……。
チョウコクは膝を折り、アスファルトに伏した。
なにが百人斬りだ。こんなことではラッパッパの四天王を倒すなど、はるかに叶わない……。
「それじゃあ、またね……」
その声はもはや遠く、二人のうちどちらが発したものかさえ、チョウコクには判断できなかった。
【つづく】
・某テレビドラマのパロディ小説です。パロ嫌いな人は読まないでね。
・いずれ百合な、エロい場面も出てきます。エロ嫌いな人は読まないでね。
・あとから矛盾とか出てきたらこっそり書き直します。
・著者の上戸に格闘技経験はないので、おかしな箇所があったらこっそり教えてください。こっそり書き直します。