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『マジすか学園vsありえね女子高 AKB48×アイドリング!!!』 第20話

 22, 2010 06:27
 ■強襲1-2■




 トンネルの向こうに、うっすらと影が見えた。
 激しい雨の中、傘をさしているその影は、こちらに気づく様子もなく、歩調を緩めずにやってきた。トンネルに入っても、閉じるのが面倒なのか、傘は開いたままで、それはくるくると楽しげに回っていた。遠心力で飛ばされた水滴がわずかな光に反射して、きらきらと輝いた。
 影が近づくと、その身長や輪郭がおぼろにわかってきた。自分より低い身長、ややふっくらとした体型、そしてなにより特徴的なのは、制服のブレザーをはちきれんばかりに圧迫している、その大きな胸だった。ネズミの情報によれば、谷澤恵里香は亜利絵根女子高でもナンバーワンの巨乳らしい。
 ブラックは、旧約聖書の知恵の書の一篇を読みはじめた。「――あなたはわたしたちを……」
 すると、暗闇の中から突然声がしたことに驚いたのか、谷澤恵里香はびくっとして脚を止めた。「わっ。――なになに、もぉーっ。びっくりしたなぁ……」
 明らかに自分のテンションとちがう谷澤恵里香に戸惑いつつも、ブラックはもう一度、読み上げた。「――あなたはわたしたちを懲らしめられたが、敵には一万倍もの罰を下された。わたしたちが裁くとき、あなたの慈しみを思い、裁かれるとき、憐れみに依り頼むためである……」
 「なにそれ? なんかの勧誘? だれ、あんた? あたしに言ってんの?」
 谷澤恵里香は立て続けに質問すると傘を畳んだ。
 「亜利絵根女子高四巨頭の一人、谷澤恵里香か?」
 「ま、そーだけどぉー……」谷澤恵里香はあきれたように言った。「あんたはだれなのかって聞いてんの」
 「馬路須加女学園、柏木由紀」
 「あぁ……。マジ女かぁ。そういや、うちの生徒を襲ってるって言ってたな、まいぷるが」
 ブラックはそれにはもう答えなかった。速攻で谷澤恵里香に襲いかかった。
 スピードを最高の武器とするブラックは、最初の一撃をもっとも重要視している。相手の出鼻を挫き、心理的に優位に立つことが勝利への最短ルートだと考えている。
 ブラックが得意とするのが、相手の腹部への強烈なフックだった。すばやい動きで相手が心理的にも身体的にも戦闘状態に入らないうちに、それを叩き込む。あるいは相手がブラックの動きを追うつもりであっても、その上を行くスピードで一撃を加える。
 谷澤恵里香の側面に動くと、相手が視線をこちらに移すころには、もう背後へと回った。そして振り返った谷澤恵里香の腹部に、強烈なフックをお見舞いした。感触は独特で、ゼリーみたいな柔らかさはブラックが今までに経験したことがないものだった。
 普通ならここで、相手はわき腹を押さえて倒れこむか、逆上のあまりエンドルフィンが分泌され痛みを感じず襲いかかってくるか、どちらかの反応を示すはずだった。
 ところが谷澤恵里香は、そのどちらのリアンションもとらなかった。
 「ちょっ……いきなりぃ?」
 ブラックは拍子抜けし、さらに一八〇度回り込み、再び背面からフックを入れる。また、ゼリーのような感触があった。
 「だーかーらぁー。ちょっと待ってって……」
 今度はあえて正対した。意識してアッパー気味に、腹部をえぐるつもりで一撃を加えた。
 だが、これにも谷澤恵里香はまったく反応をしない。
 ブラックは焦った。こんなことは初めてだった。背中を汗が伝った。
 腹がダメなら……。ブラックは背後に移動した。ロングスカートをめくり上げ、長い脚から繰り出されるタイキックばりのスピードと威力を持った蹴りを、谷澤恵里香の太ももの裏に入れた。谷澤恵里香のミニスカートからむき出しになった太ももの内側が、その衝撃でぶるんと揺れた。
 今度こそ効いたはず……。
 そしてブラックは闇にまぎれた。息を殺し、壁際に潜み、己を消した。警察犬が来ても、その気配を探ることは不可能なくらい、ブラックは闇と同化した。
 「あのさぁ……。あれ? いなくなっちゃった……」谷澤恵里香はきょろきょろした。
 ブラックは足音を立てずに、谷澤恵里香の背後の壁に回りこむ。なぜかはわからないが打撃に効果がないのなら、絞め上げるまでだ。
 谷澤恵里香の髪の匂いが嗅げるほど近くまで接近する。相手の頸を絞める、フロントチョークの体勢に入った。
 気づかれるはずはなかった。今まで一度も、そんなことはなかった。ところがこのとき、それは起きた。
 谷澤恵里香はあと一秒でフロントチョークが決まるという瞬間に、振り返ってブラックを見た。これにはブラックも驚き、仕掛けのタイミングを逃してしまった。いままでにないことが起きたためのとまどいだった。このまま前からのフロントチョークに変更するか、あるいはもう一度下がって体勢を整えるか、ブラックは逡巡した。そして、これが命取りとなった。
 谷澤恵里香が抱き付いてきた。胸を締めようというのか、両腕を背中で回した。ブラックは腕の動きを塞がれてしまった。最大の武器であるスピードを生かせなければ、ブラックの戦闘能力は半減されてしまう。
 ――しまった……。
 ブラックはあがいた。動きを拘束されたのは初めてだった。このまま力任せに締められるのだろう。ブラックは緊張した。
 谷澤恵里香はブラックを抱いたまま前進し、やがてトンネルの壁に背中を押し付けた。もう正面からは逃げられない。
 だが、そこで、谷澤恵里香は再び意外な行動をとった。
 ブラックとは十センチ以上の身長差がある谷澤恵里香が爪先立ちをした。その瞬間、拘束が解けた――が、谷澤恵里香の両腕は、今度はブラックの頬を包み込んだ。その手のひらは暖かく、ほんのりと湿っていて、なんとも心地よい。ブラックは妙な気分になった。それは大島優子の手のひらに似ていた。
 体は自由になったのに、ブラックは動けなかった。谷澤恵里香の十本の指がブラックの敏感な肌を這う。それは性的快感を呼び起こそうとする動きだった。
 そして谷澤恵里香はそのままブラックの顔を、自分の顔に寄せた。鼻息が感じられるくらい、二人は密着した。
 このときも、ブラックは逃げようと思えば逃げられたはずだった。しかし、できなかった。媚薬を嗅がされたかのように、ブラックの脳のどこかが甘い痺れで支配されていたからだ。
 「暴力はきらい……」谷澤恵里香の吐息がブラックの鼻腔をくすぐった。「気持ちいいことしようよ」
 谷澤恵里香のふっくらした唇が、ブラックの唇と重なった。



 
【つづく】

COMMENT - 5

ゴン  2010, 06. 24 [Thu] 12:00

わっかりましたー!

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上戸ともひこ  2010, 06. 23 [Wed] 21:10

Re: タイトルなし

>ゴンさん
 あ。そうなんですか。知っている一人って、シンケンイエローですか?
 アイドリング!!!もいいグループなので、機会があったら見てみてくださいw

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ゴン  2010, 06. 23 [Wed] 07:56

はい、あまり(というか、一人しか)知りません(笑)

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上戸ともひこ  2010, 06. 23 [Wed] 05:01

Re: タイトルなし

>ゴンさん
 いくらブラックでも、あっさり倒してしまったら面白くないんでw
 百合要素は全編にわたって入っていますけど、今回と次回は特に濃いです。
 ゴンさんはアイドリング!!!のメンバーはあまり知らないんですか?

 連載、何回続くかわかりませんが、よかったら読んでください。

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ゴン  2010, 06. 22 [Tue] 21:50

ブラックやったら一人くらいあっさりと倒すと思ってたんですけどね~、相手色んな意味で強いですね!百合!?

20回おめでとうございます!

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