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■策謀-1■




 サドは渾身の力を込めて、右拳をブラックの面長の頬に叩き込んだ。
 拳には、頬骨を直に打った感触があった。かなりの痛みにちがいない。それでもサドの拳に、ややよろけただけのブラックは、さすが四天王だった。
 だが、サドにはそれがよけいに腹立たしかった。
 もう一度同じ場所に拳を入れてやる。
 ブラックは歯を食いしばり、耐えているように見えた。
 そうか、まだ我慢できるのか。それなら、これはどうだ?
 サドはブーツの細いヒールを、ブラックの腹に突き刺すつもりで蹴った。
 四天王といえど、この痛みと衝撃には絶えられないようだった。ブラックは吹っ飛び、ラッパッパ・アンダーガールズの四人が立っている場所に倒れた。
 アンダーガールズの四人は血の気をなくした表情で、まっすぐにサドを見ていた。哀れなブラックの醜態から目を逸らしているようでもあった。
 サドの下腹部に、じんじんと痺れるような感覚がやってきた。
 いつものようにトリゴヤの舌が欲しくなった。トリゴヤをベッドの上に押し倒し、その顔面の上に膝立ちをして下着を取る……もう何度も何度もしてきた行為だ。
 そのトリゴヤは部室の椅子に座ったまま、爪やすりで爪を磨いている。すぐ横でブラックが蹴り倒されても、まったく動じる様子はなかった。
 サドは倒れたブラックに歩み寄った。アンダーガールズたちが、さっと道を開いた。
 スカジャンの襟元を鷲摑みにし、ブラックを引き寄せる。そして今度は、思いっきりビンタを浴びせた。
 ビンタとは思えないほど大きな音がした。
 ブラックはもちろん抵抗などしない。サドの怒りが収まるまで、この制裁は続くことを知っているのだろう。無様な、ラッパッパの威信を失墜させるようなマネをした奴に、サドは今までもそうしてきたし、これからもそうするつもりだった。
 ビンタを何回往復したか、もうサドにはわからなくなっていた。ブラックの両方の頬は真っ赤に腫れ、ビンタのあまりの激しさに口の中を切ったらしく唇の両端から血が滴っている。それを見た途端、サドは自分の右手もまた赤に染まっていることに気づいた。
 ブラックはよろよろと起き上がり、そのまま正座をすると、サドに向かって土下座をした。「ふみまへんれした……」
 「ねえ、サドぉ……」トリゴヤが言った。女子同士のパジャマパーティーで飲み物がなくなったから買ってきて、とだれかに頼むくらいのテンションだった。「そのくらいにしときなよ。ブラック、しばらく戦えなくなっちゃうよ」
 サドは無視した。そんなこと、いちいち言われなくてもわかっている。だが、腹の虫が収まらなかった。
 敵である亜利絵根の女に抱かれたブラックを、サドは普通の制裁で許すわけにはいかなかった。そうでなければアンダーへの示しが付かない。それに、ここのところ――前田とのタイマンに負けて以来――、サドは思いっきり戦っていなかった。この「制裁」は戦いの代替行為だった。
 ――戦いたい……。
 亜利絵根の校舎に乗り込んで大暴れができたら、どれほど楽しいだろう。思う存分掴み、投げ、殴り、蹴る。戦いの中でなら、自分が受ける痛みさえ心地いい。
 けれども、サドにはもはや、背中を預けられる者はいなかった。四天王ではダメだ。自分が背中を預けられるのは、自分より「強き者」でなければならない。シブヤもブラックもトリゴヤも、サドよりも弱い。といって頭のネジが外れているゲキカラは元より無理だ。
 ふと、脳裏に浮かんだ光景があった。不思議なことに、そこに自分の姿はなかった。
 ――大島優子と前田敦子……。
 ふたりが背中を預けあえば、亜利絵根と五分、いや、それ以上の戦いができるかもしれない。もちろん大島優子が退院できるくらいに健康を取り戻したら、という前提の話だが……。
 なにを考えているんだ、私は。
 自分で考えたというのに、サドは狂おしいほどの嫉妬に襲われた。そんなことは私が許さねぇ。優子さんの背中を守る権利があるのは私だけだ。
 「――ねえ、サドっ。聞いてるぅ?」
 トリゴヤの声で、サドは我に帰った。「ああ、すまない……。聞いてなかった」
 「もーぉ、サドってば、ちゃんと話聞いてよ」
 「で。なんだ?」
 「あたし、"見て"こようか、亜利絵根行って」
 「"見る"……?」
 「そ」
 「それはダメだ。優子さんに厳命されている」
 「でもさぁ。優子さん、亜利絵根のこと知ってるの?」
 サドはどう答えるべきか一瞬迷ったが、正直に答えたほうがいいと判断した。「――知らない」
 「教えてないの? ヤバくない? 絶対ヤバいよ」
 「大丈夫だ。私がなんとかする」
 「だったら、バレる前にカタつけたほうがいいって。そのためには、あたしが行ったほうが……」
 「優子さんは今、病気と戦ってるんだ。余計な神経を使わせたくない。私たちだけで学園を守るんだ」
 一つだけ大きな嘘をついているサドは、それ以外に大島優子に嘘はつきたくなかった。大島優子には極秘で亜利絵根の件を解決する。これだけはやらざるをえない。しかし一つの嘘を隠すために、二つ目の嘘をついてしまえば、それは止めどない嘘の連鎖を呼ぶに決まっている。やがて矛盾が矛盾を呼び、最終的にどんなことになるのか予想もつかない。先日の面会でもわかった通り、大島優子はなにかに気づいている。早く解決しなければならない。
 すべてが終わったとき、サドは大島優子にすべてを話し、どんな制裁でも受ける覚悟だった。
 でも、それまでは私がなんとかしなければならない。優子さんが再び、このラッパッパの玉座に鎮座する、その日まで……。
 「おまえたちもだ」サドはアンダーの四人に言った。今回の亜利絵根の件、もう優子さんに伝えた者はいないだろうな? いたら今すぐ名乗り出ろ。今なら許す。だが、あとでそれがわかったら……おまえたちもこうなる」
 サドはまだ土下座をしているブラックを見た。
 サドの問いに、答えた者はいなかった。
 ノックの音がした。
 アンダーの昭和がドアに駆け寄り、だれだ、と誰何(すいか)した。
 「あっしです」ネズミの声。
 サドはブラックに立てと命じ、昭和に目で合図した。
 ドアが開かれると、ピンクのパーカーを被ったネズミが現れた。いつものようにポケットに手を突っ込み、ガムを噛んでいる。
 「なんの用だ?」
 「お取り込み中スか?」ネズミは顔を腫らしたブラックを見やった。
 「お前には関係ない。用件を言え」
 「亜利絵根、相当強いらしいスね。昨日もだれかやられたとか……」ネズミは再び、ブラックを見た。
 ブラックはうつむいたまま、なにも言わない。
 「だれに聞いた?」
 「いいじゃないスか。大丈夫スよ、あっし、だれにも言ってませんから」
 「おかしなことを吹聴してまわればどうなるかわかってんだろうな」
 「もちろん、わかってますよ、サドさん」ネズミはそこで一息置いた。「でも、あっしが黙っていたところで、事態の解決にはならないスよね? 根本的な対策が必要じゃないスか」
 「なにかあるってのか?」
 ネズミごときの提案を受けるのは癪だが、自分の頭で考えられることには限界がある。立場のちがう者からの意見を聞いておくのもいいかもしれない。
 「これ、名案ス」ネズミはポケットに突っ込んでいた手を出した。それは一枚の写真を掴んでいた。「だれだかわかりますか?」
 サドは写真を受け取った。知っているような気はするが、記憶の奥のほうにしまわれているようで思い出せない。
 横から覗き込んだトリゴヤが、知ってるーっ、と声を上げた。「あ――2年の菊地じゃん。今は純情堕天使ってチームのヘッドやってる子だよ。この子、一回停学になったけど、戻ってきたの?」
 「ええ。珍しいスけどね……」
 そこまで聞いて、サドは思い出した。菊地が不純異性交遊で停学になったため、2年をチームホルモンに任せたことまで……。けど、それはかなり前の話ではないか。なぜ、今頃になってネズミが菊地の話題を挙げるのか……。
 「菊地がどうしたって?」
 「そいつのチーム、デカくなったんスよ。チームホルモンが解散したんで」
 「チームホルモン、解散したのか」聞いていなかった。いや、報告は受けたのかもしれない。そういえば、うっすらとそんな話を聞いたような気がする。ここのところ、対亜利絵根のことばかり考えていて、部員からの報告は右から左に抜けていた。「あ、いや……。そうだったな」
 「それでホルモンにいたメンバーは、四人がそっくりそのまま純情堕天使に入ったんスよ。だから今のところ、純情堕天使が2年の最大勢力になってます」
 「なるほど……。そいつらを使うわけか」
 「そいつらが勝ったら2年の自治権を認めればいいし、負けてもラッパッパに損害はない……。どっちに転んでも、ゲキカラさんを探すための時間稼ぎにはなるじゃないスか。菊地ってのは、権力に憧れてるらしいから、その餌にはすぐ食いつきますよ」
 ネズミの提案は魅力的だった。ゲキカラはアンダーガールズを使って居所を探させているが、良い情報はまったくなかった。
 だが、この女の、腹に一物あるような怪しさには注意しなければならない。
 「たしかにいいかもしれんな。だったらひとつ、頼みたいことがある」
 「なんスか?」
 「おまえもゲキカラを探せ。得意分野だろ?」サドは微笑んだ。
  だが、ネズミは人を舐めたような目線でこう言った。「――人探しは苦手で……」
 サドはその目つきに激しい殺意を抱いた。
 気が付くと、ネズミの首に手をかけていた。親指を開き、喉に押し当て、そのまま一気に壁に押し付ける。
 「いいか、ネズミ……」手のひらに、ネズミの生暖かい体温を感じる。ネズミの苦悶に満ちた表情は、サドの性的衝動を刺激した。性格は気に入らないが、フードの奥の顔がコンピュータグラフィックのような美しさと精巧さを兼ね備えていることは認めなくてはなるまい。一度、この女をむちゃくちゃに責め立ててやりたかった。気絶するまで快楽の地獄を味あわせたかった。が、今はお灸の時間だ。サドはネズミの首をさらに絞めた。「てめえがなにか企んでるのは百も承知だ。だがな、てめえが馬路須加女学園の生徒である限り、命の保障をしているのがうちらラッパッパだってことを忘れ……」
 そのとき、サドの左首筋に、硬く冷たいものが押し当てられた。サドはハッとした。かろうじて、ネズミを抑えてはいたが絞めている手を緩めてしまった。
 「――なにも企んでなんかいないスよ、サドさん」
 押し当てられたものは、いつの間にかネズミが手にしていたスタンガンの先端の電極部だった。スウェットのポケットの中から取り出したのだろう。そうか、だからこいつはいつもポケットに手を突っ込んでいるのか……。
 サドは迂闊な自分を呪った。
 「――サドさんっ」
 「――テメェ、サドさんになにしやがるっ」
 アンダーガールズたちの声が飛び交った。サドは空いている左手で、それを制した。
 ネズミはサドを見上げ、にたりと笑った。さっき、サドが殺意を覚えた、あの目つき。「あっしは腕っ節には自信がないもんで、こいつにいつも助けてもらってるんスよ。小さいけどなかなか強力で、このあいだあっしをレイプしようとした男は泡吹いちまいました。夜道って危険スね」
 ケンカなら、こんなチビに負けるわけはない。だが、たしかにスタンガンはヤバい。
 サドは努めて冷静に対処した。「てめえ、だれに対してそんな真似してるのか、わかってんのか、あん? そいつを使ったらこの部室を生きて出られねえぜ」
 アンダーガールズの四人がサドの背後までやってきた。一声かければネズミはあっという間にボコられて、裸に剥かれる。しかし、ネズミをそんな目に合わせたところで、サドの気は晴れるだろうがなにひとつ得はない。なにかを企んでいるのはわかっているが、馬路須加女学園一の情報屋に代わる存在はいないのだ。
 「あっしも必死なんスよ。いろいろと、ね。そのためには危ない橋も渡らなくちゃいけないんスよ……」
 ネズミの本気を感じたサドは、喉から手を離した。
 が、スタンガンはまだ首筋に当てられたままだ。
 「今日のところは勘弁してやる。だが、これだけは覚えておけ。次に私の前でこのおもちゃを出したとき、おまえの命はない。わかったら、こいつを放して、この部屋から出て行け」
 ネズミはゆっくりと手を下ろし、顔を伏せた。
 アンダーガールズの四人がサドを見つめていた。全員の顔に、このまま帰していいのかという疑問が浮かんでいた。サドは小さく首を横に振った。四人はネズミの進路を開けた。
 ――私を脅したツケ、いつか払ってもらうぜ……。
 サドはネズミの背中を見て、心の中でそうつぶやいた。



【つづく】


 ・某テレビドラマのパロディ小説です。パロ嫌いな人は読まないでね。
 ・あとから矛盾とか出てきたらこっそり書き直します。
 ・著者の上戸に格闘技経験はないので、おかしな箇所があったらこっそり教えてください。こっそり書き直します。

また、あれこれ。

 25, 2010 06:11
■日曜日の着衣濡れBBQで知りあった方々からマイミクの申請があって、またもや新たな世界が広がる予感。楽しみです。過去の日記を読まれてしまうとわかる通り、なにかと文句ばかり言ってるヘタレな自分ですが、よろしければ長くお付き合いください。

■そのBBQで、撮影しているときに女性陣の中から「今度のライダーは小林靖子脚本だって」という声が聞こえたので、靖子タン好きとしてはぜひともお話をしたかったんだけど、「いい濡れ」があったので会話に加われなかった……。

■iPhoneは、ウワサ通り、やっぱりバッテリがすぐなくなる。一週間ほど使ってみて思ったのは、位置情報がけっこう消費するってこと。仕事でナビ替わりに使っていると、あっというまに残量が減っていく。それでも、それさえ使わなければ二日間は使えるけど。いろいろネットで調べたら、やはり使い切ってから充電するほうがバッテリが長持ちするらしいので、あと数パーセントになったときはエロ画像を検索して使い切るようにしてます。
 とはいえ、この機械は本当によくできている。バッテリさえもつなら、ずーっと遊んでいられるよ。特に気に入っているのはカメラ。このレンズの歪みはすばらしい。広角好きとしてはたまらん。一眼じゃなくて、これでバシバシ濡れた子を撮ってみたい気もする。

■けっこう期待している『MM9』のドラマ、第一話だけ見た。うーん……地味っ。伊藤和典だからだろうけど、『パトレイバー』じゃん、これ。けど、キャラクターがなにかとはしゃぎがちな特撮ドラマよりはいいけど。あと演出の間がすごく悪い。止まった二台の車から回想シーンになるという演出の意味もまったくない。ヒロインが地味。
 ……などと書いたけど、怪獣物なので全部見るつもりです。がんばってよ、樋口総監督!!!

■コミケの申し込み終了。今度こそ出たい。四回連続で抽選漏れしてる。
 うちと同ジャンルの、新作を出してないサークルが出ていて、「新作ないけど申し込んだら受かっちゃって」とか言うのを聞いたときは腸煮えくり返ったよ。その裏で、どれだけの人たちが悔しい思いをしてるのかわからんのだろうなぁ、あいつ。サークルというより商売メインでやってるんだから、コミケに出るなよ。

■映画『ぼくのエリ』の原作を読んだ。珍しく、映画のほうがストーリーの出来がいいと思う。多くを語らないほうがいいこともあるのだ。たとえばエリと一緒にいた男とか。けどそれは、井上敏樹みたいに「考えてない」からじゃなくて、そのほうが観客の想像力を深めるからだ。で、ちゃんとそれが観客に伝わってくるんだよね、いい映画って。
 あと最後のプールのあの場面。これはどう考えても、映画のほうがすばらしいよね!!!


■買ってあるマンガ、全然読めてない。ジョージ秋山『ドストエフスキーの犬』と『アマゾンくん ドブゲロサマ』、大場つぐみ・小畑健『バクマン9』、つの丸『たいようのマキバオー13』。

■来月頭には本屋さんに並ぶ予定の競馬本、執筆終了。今回も急かされたなあ。AKB絡みの記述はけっこう校正で削除された(悲笑)。個性のない、単にデータを羅列するだけの本なら、おれが書かなくてもいいんじゃないかって気もしてしまう。

■んな感じ。

今日はお休み。

 20, 2010 20:01
 上野の国立科学博物館に行ってきた。

 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2010/mammal/umi/index.html

 でも、正直、前の「陸のなかまたち」のほうがいろんな生き物見られて面白かった。今回は『ザ・コーブ』っぽいものばかりだった。
 夏休みでも、平日ならそんなに混んでないかと思ったら、けっこうたくさんの人出でしたよ。
 一時間ほどで見終わって、常設展には寄らなかった。「陸の~」のときに見たし。チケットは企画展も常設展も入れるんだけど、企画展しか見ないから500円くらいまけてほしかった。

 午後からは錦糸町で『ベストキッド』。ウィル・スミスの子供、がんばってたよ!!! 肉体も動きもすごい。バーチャファイター、やりたくなった。ウィル・スミスの息子が惚れる女の子、あと10倍くらいかわいかったらよかったのに残念。でも、物語の途中で、簡単に心変わりするのは許せねぇ、ビッチ!!!

 んで、亀戸天神とか近くの神社とか寄って、AKB48の内田眞由美がじゃんけん選抜でセンターを獲れるようにお願いしてきた。

 明日はAKB48の握手会で幕張メッセに行きます。

iPhone買っちまった。

 18, 2010 11:50
 一時はauにしようかなと思ったりもしたんだけど、いろんなアプリの魅力に負けた‥。
一ヶ月くらい前に予約して、待っているあいだは長かったなあ‥。
 けど、触りはじめてから一時間ほどで、いきなりフリーズしたときは焦ったよ(笑)。

 とりあえずメールの設定は終わったので、そろそろ寝ます。

夏休みの思い出。

 17, 2010 06:58
■映画『シュアリーサムディ』と『ソルト』を府中まで見に行った。
 府中の街は初めての経験だ。神社好きとしては、府中といえば大国魂神社。けど、今は御鎮座壱千九百年記念事業とかで、拝殿の周りに工事用の囲いがされていて風情もなんにもない。がっくし。おまけに雨は降ってくるわ、『シュアリーサムディ』と『ソルト』はつまんないわで、府中の街の印象が悪くなった(それはウソ)。
 このあいだ宇多丸が、映画における爆弾の話をラジオでしていたが、まさにその通り!!! 爆弾を作るときにもっとも難関なのは起爆装置の作り方ではなく、爆薬をどう集めるか、なのだ。『告白』もそうだったけど、中学生があんな爆発起こす爆弾なんて絶対作れるわけがない。『シュアリーサムディ』でも爆弾が爆発する。もう、それだけでくだらない映画に認定せざるをえない。でも小西真奈美のソープ嬢はエロかった。

■コミケには二日目だけ行った。カタログを事前にチェックしていなかったので、おれの好きなジャンル(特撮とかアイドルとか評論とか)は二日目にあると思い込んでいた。それで会場でカタログ買ってチェックしたら、それらはちがう日だったことを知って愕然……。陸遊馬さんから頼まれた本を買いだししたり、企業ブースを回ったり(関心がないので普段は行かない。今回は遊馬さんにいろいろ教えてもらった)、東館に一時的に閉じ込められたり、コスプレ広場に行ったけどだれも撮らなかったり、帰りのバスの列が混んでいたので臨海副都心線の駅に行ったら入場制限で待たされたり……。いろいろあったけどコミケの雰囲気味わえたのでよかったです。

■『仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ』と同時上映の『天装戦隊ゴセイジャー エピックON THEムービー』も見た。
 『ゴセイジャー』は、どうしてこうもテレビサイズのものしか作れないのかと逆に関心した。磯山さやかもエロくないから、褒めるべき箇所がまったくない!!!
 『W』は良い評判を聞いていたので期待値高かったからか、さほどいい出来とも思えなかった。やっぱりテレビサイズでしかないんだよなぁ。特に演出。これはテレビ版を映画にする作品に常に求めてしまうんだけど、映画ならではのゴージャス感について、もっと考えるべきだと思う。物語のスケールもそうだけど(その点は『W』は良かったと思う)、スクリーンで見せるということの意味がわかってないんじゃないか? 『東のエデン』の映画もそこがダメだった。
 『W』に限らない問題だけど、最近のドラマはコント的な場面でふざけた音を入れている。「ほら、ここは笑うシーンですよ」ってことか。バカにすんなよ。それって、宇多丸の言うところの「ベロベロバー」だよね。人を笑わせるってどれだけ大変なことかわかってる? 劇場でこういう場面を見ると、もう一気にテンションが下がる。でも恐ろしいことに、多くの観客は笑ってるんだYO!!! ……てことは、やっぱりおれがまちがってるんだな。はい、わかりました。さーせん。

■秋に出す競馬本の原稿を書き上げ、そのゲラが早くも届いた。今回は5ページ多くなってしまったので、それを削除するというめんどくさい作業が待っている。これ、大島麻衣の『めんどくさい愛情』にかけてみたんだがどうだろう(どうせかけるなら、『愛ってナンダホー』をかけろ)。木曜日までに終わらせると言ったので気合入れてやらないと!!!

■昨日は『マジすか学園vsありえね女子高 AKB48×アイドリング!!!』の第24話を延々と書いてた。最後のほうは疲れてきたので、なんか投げやり感出てるな(笑)。

■新しいカメラを買った。キャノンのIXY200Fってコンデジ。専用ソフトをインストールしてカメラを繋げたら、なぜか認識しなくていろいろ試したがダメ。結局、ペンタックスの一眼デジにSDカージを入れてPCに繋いで読み込ませた。なんだよ、この作業。

■そんな感じの夏休みでした。
 ■特訓1-3■





 立ち上がっても、ヲタは直立の姿勢でいた。だるまも、そんなヲタの様子をうかがって、同じく直立した。
 「硬くならなくってもいいっての……」ノンティは笑顔で言った。人なつこいその表情は、彼女がかつて数百人の頂点に立っていた女だとは、微塵も感じさせなかった。「あたしたちは毎朝のお参りに来ただけだし。ね、めーたん」
 「そ。お店が終わったあとはいつもこの神社に来るのよ。今日はありがとう、明日もよろしくお願いしますって」
 でも、自分たちが階段を上り下りしているときに、この三人は見ていない。ヲタは不思議に思ったが、まだ解けない恐怖の呪縛に、口を閉ざしていた。
 「ま。ご利益なんかないけどね……って、こんなところで言ったら神様に聞こえちゃうか」ノンティは目を「へ」の字に曲げて、ぺろりと舌を出した。そのおどけた変顔を、ヲタは思わず笑いそうになった。
 「縁結びの神様のはずなのに、いまだに王子様は現れないし」シンディが口を尖らせて、ノンティとめーたんを見た。「結ばれてるのは高校時代の腐れ縁だけ。やんなっちゃう」
 「あたしだってやんなっちゃうよ」ノンティが笑った。
 「ねえ、とりあえず先に、お参りしちゃおうよ」めーたんが提案し、ノンティとシンディは頷いた。
 三人は、ヲタとだるまをその場に置いたまま、拝殿の短い階段を登った。鈴を鳴らし、賽銭を投げ入れ、二礼二拍手一礼をする。手を合わせている時間が長かったのが印象的だった。
 みんなの様子を見ながら、ヲタはだるまに小さく耳打ちするように言った。「一時はどうなるかと思ったぜ。あの先輩たち、マジで怖いから気をつけろよ。昔、ヤバ女二百人を相手に戦ったくらいだ」
 「二百人を三人でっか?」
 「そうだ。信じられねえけど、どうやらホントらしい」
 「たしかに、さっきの力は女とは思えん怪力やった……」
 「全盛期の大島優子といい勝負だってウワサも聞いたことある」
 そんなことを話していると、三人はヲタとだるまの元に戻ってきた。
 「――あのぉ……」だるまがおずおずと口を開いた。「パイセンたちは、大島パイセンのなんこ上なんすか?」
 「あたしら三人そろって二回留年してるから、四こ上かな」
 「に、二回も、でっか?」
 「わざとよ、わざと。学校、面白くてさ」シンディは笑った。
 「三年のときに優子が入学してきてから」ノンティが言った。「いつも、もう一人の大島と比較されてさ。悔しかっただろうなあ……」
 「もう一人、大島ってパイセンがいたんでっか?」
 「そう。麻衣って子。まいまいって呼ばれててね。入学当初は優子は”弱いほうの大島”って呼ばれてた……」
 そしてノンティは、ヲタの知らない時代のマジ女について語り始めた。


 大島麻衣は、中学二年のときに、通っていた市立中学校を女として初めて制覇した。頂点に立った大島麻衣の配下には、男を含めて三百人の兵隊が編成された。ケンカのスタイルはなんでもあり。手近に使えるものがあればどんなものでも武器として使った。中でも尖っているものが大のお気に入りで、ケンカをするときは文房具を主に使用した。中学生のころ、大島麻衣がトイレ以外でミニスカートの下に手を入れたときは、とにかく全力で逃げたほうがいい、と言われていた。中からコンパス、ボールペン、シャープペンシル、クリップ、ホッチキス、巻尺が現れることになるからだった。ただし大島麻衣は刃物にトラウマがあるようで、自分からカッターナイフなどを使うことはなかった。
 いくつもの学校を受験したもののことごとく入試で落とされ、行き場をなくした大島麻衣が馬路須加学園に入学するといううわさが流れ始め、やがてそれは現実となった。
 入学式の日、ブルーローズは大島麻衣を呼び出した。中学時代は好き勝手暴れたらしいが、ここじゃそうはいかねぇよ。総長のノンティが釘を差すと、大島麻衣はニヤリと笑っただけだった。
 ノンティは大島麻衣をシメた。
 大島麻衣が一切抵抗せず、されるがままだったのを、ノンティはかえって不気味に感じた。
 いくら中学校で番を張っていた大島麻衣とて、その場にいるブルーローズのメンバー二十人を相手に闘い、勝つのは不可能だ。
 「かといってただ殴られるのも嫌だった。だからせめてもの抵抗として、笑ったんじゃないかな……」大島麻衣が抗わなかった理由を、ノンティはそう解釈している。
 その後、大島麻衣は同じ中学からの藤江れいなと近野莉菜を舎弟とし、一年の統治をはじめた。大島麻衣のクラスでは比喩ではなく、血が流れない日はなかった。大島麻衣とダチでない者が一秒以上目を合わせた場合、次の瞬間に体のどこからか血を流すことになった。
 1年C組は二週間で大島麻衣の「物」となった。
 だが、大島麻衣はブルーローズの配下の者には手を出さなかった。ブルーローズも大島麻衣を監視下に置いたままでいた。出る杭は早めに抜くべき、と主張したのはシンディだったが、ノンティはあえてそのままにした。自分たちが卒業したあとに、学園を統治する者が必要だった。大島麻衣がその器なら、その過程を見届けたいという気持ちがあった。
 「やればできる子、だと思ってたわ」
 大島麻衣は学校外でも暴れた。他校の生徒とのケンカはもちろん、通学途中の電車内で制服のミニスカートから伸びた脚を見ていただけのサラリーマンを痴漢呼ばわりし「慰謝料」をせしめたりした。これは大島麻衣のチーム「ナンダホー」の重要な活動資金になっていた。
 一方、大島優子は1年A組に編入されていた。入学当初は無名だった大島優子は、一年の初夏に吹奏楽部で「ラッパッパ」を立ち上げ、脚光を浴びるようになる。
 憂いは早めに絶つことを信条にしていた大島麻衣にタイマンを申し込まれた大島優子は、三秒で床に伸された。密かに学園統一を狙う大島優子にとって、これは大いなる屈辱だった。
 それ以降、大島優子は「弱いほうの大島」と呼ばれた。
 大島優子は自分が井の中の蛙だということを知った。中学時代はそこそこ強かったつもりだが、高校に入ってみると自分の中学時代の栄光を知る者はおらず、数多いるヤンキーの中の一人でしかなかった。そして自分より強いやつはいくらでもいた。
 大島優子はみずからを律し、鍛えに鍛えた。
 「そのとき、優子も何度も山篭りしたんだよ……」ノンティは遠い目で言った。「その場所がここの神社。なんでか知らないけど、マジ女の子たちは、特訓っていうとここに来るんだよね。知らず知らずのうちに伝統になってるんだと思う……」
 その甲斐あってか、大島優子は徐々に力をつけ、ラッパッパも構成員を拡大していった。それでもラッパッパは「二軍」と呼ばれた。ラッパッパがどれだけ強くなっても、ナンダホーはそれ以上に強さを増したからだ。十はくだらない数の二年のチームでさえ、ナンダホーには太刀打ちできなかった。
 ブルーローズのメンバーたちは、自分たちが去ったあと、マジ女を統べるのはナンダホーだと確信していた。ノンティは大島麻衣に帝王学を、めーたんは闘いの技術と性技を、シンディは女としての魅力を磨くすべと人身掌握術を、それぞれが伝えた。大島麻衣はそれらをスポンジが水を吸うように自分のものとした。
 「てゆーか、めーたんはまいまいだけじゃなくて優子とも寝てたんだよ。なにしろ当時のマジ女は、めーたんと寝てなかった子を探すほうが大変だったからね」
 「ヤだ。自分だって私の舌が好きなくせに、人を淫乱みたいな言い方して……」
 「だって、そうじゃん。だからあたしたち、いまだに男じゃ満足できないんだよ……って、初めて会った子の前でなに言わせんの」
 もはやブルーローズだけではなく、学園内のだれもがマジ女はナンダホーの手の中にあると思っていた――大島優子とラッパッパのメンバーを除いては……。
 大島麻衣と大島優子が二年になり、ブルーローズは卒業と同時に解散した。潔さを旨とするブルーローズはチームそのものの存続には固執しなかった。ブルーローズの名は伝説として残ったほうがいい、とノンティは判断した。
 「自分たちが卒業したあとにだらだらと続いても、いつかは凋落するからね。だったら、強いままで解散したほうがかっこいいでしょ。それに、まいまいがいたから学園そのものは落ち着くと思ってたし……」そしてノンティは、これから先は、自分たちが直接見聞きしたわけじゃなくて、後輩から聞いたんだけど……と断ってから、再び話し出した。
 ブルーローズ亡きあと、マジ女は「ナンダホー政権」の元に安寧した。
 それでも大島優子はあきらめなかった。彼女の不屈の精神こそ、ラッパッパそのものであり、また強さでもあった。
 ナンダホーとラッパッパの力の差が覆されたのは、のちに「血の月曜日」と呼ばれる事件を起こした一人の転入生と、大島優子の矢場久根三十人斬りがきっかけだった。
 ゲキカラと呼ばれることになる松井玲奈が、名古屋の高校からマジ女の2年A組に転校してきたのは、大島優子が二年生になった六月の雨の日だった。
 転校初日、転入生へ「挨拶」をするため、藤江れいなと近野莉菜が松井玲奈の教室へやってきた。教室の隅に松井玲奈を追い込んだ二人は、一分と経たないうちに次々と血を噴いて倒れた。松井玲奈がいつのまにか手にしていた彫刻刀が、二人の首や喉をえぐったのだ。松井玲奈はなおも襲いかかり、二人を病院送りにした。
 報せを聞いた大島麻衣は、もちろん黙っていなかった。学園を支配しているのがだれなのか教える必要があった。かわいい舎弟の二人を半殺しにした転入生に。
 ナンダホーは今度は十人で松井玲奈を下校時に襲撃したものの、全員がビニール傘の骨で体中を突き刺された。大島麻衣のお株を奪うような闘い方は、ナンダホーを恐怖させた。
 ウワサは瞬く間に学園に広まった。ナンダホーの権威を失墜させないために、大島麻衣はタイマンでケリをつけるほかなくなった。
 「血の月曜日」と呼ばれることになるその日の夕方、屋上に呼び出された松井玲奈は大島麻衣と正対した。大島麻衣はいつものように、ミニスカートの中に様々な「文房具」を隠していた。これはなんとしても勝たなければいけない闘いだった。
 だが結局、屋上の床と、病院に運ぶためにやってきた救急隊のストレッチャーは主に大島麻衣の血で染められた。アキレス腱からの出血が特にひどく、大島麻衣は今でも歩くためのリハビリを続けている。
 腕、乳房、太ももにコンパスやボールペンが突き刺さっていた松井玲奈は、血まみれのまま笑っていた。それが二人の勝敗の理由だった。
 大島麻衣の出血はなかなか止まらず、一時は危険な状態となった。命だけはとりとめたが、学校も自主退学した。
 「ナンダホーのメンバーはまいまいを助けようとしたけど、絶対に手を出すなって前もって言われていた。それはまいまいの、最後の矜持だったと思う。タイマンはタイマンなんだって……」
 トップが不在になり、馬路須加女学園は無政府状態になった。生徒会では秩序を維持できず、小さなチームが雨後の筍のように現れては消え、消えては現れた。その中で、ラッパッパは着々と勢力を拡大していった。
 いつしかゲキカラと称されるようになった松井玲奈を、大島優子はめーたん譲りの性技で寵愛した。男を知らぬまま女の悦びを知ったゲキカラは、大島優子の前では従順になった。それにより、マジ女のパワーバランスは一気にラッパッパへと傾いた。大島優子とゲキカラの最強タッグに抗うものは、もう存在しなかった。
 そんなとき、マジ女の状態を知った矢場久根女子高が大島優子に刺客を放った。その数、三十人。事実上、その時点でマジ女の頂点に立ちそうな大島優子をシメることにより、マジ女の混乱状態を長引かせるのが目的だと思われた。
 どう考えても矢場久根女子高が負けるわけはなかった。一人対三十人である。
 だが、大島優子は負けなかった。三十人が地に伏したとき、唯一立っていたのが大島優子だった。この結果はすぐに馬路須加女学園と矢場久根女子高に伝わった。
 そり後、馬路須加女学園で、大島優子に歯向かう者はいなくなった。群雄割拠の時代に突入していた馬路須加女学園はこれにより平定されたかたちとなり、ラッパッパ時代が始まった。
 「麻里子も優子に魅せられた一人よ」ノンティが言った。「あの子、優子より年上なんだけど、優子と卒業まで一緒にいたいから、わざと留年したんだって」
 篠田麻里子が一匹狼という立場を選んだのは、師と呼べる人を探していたからだった。自分は人の上に立つ器量はないとわかっていた。しかし尊敬できる師の元でなら、自分の力を生かせる。
 そんなとき、篠田麻里子はとある集団ケンカのときに、大島優子と初めて拳を交えた。そして、その強さと優しさに魅かれたらしい。
 「麻里子は、優子の燃える口づけを受けて、人間じゃいられなくなったって言ってた……。あたしも受けてみたいなぁ……そんなキス」ノンティは頬を紅らめた。
 その篠田麻里子が副部長の座に就くと、シブヤ、ブラック、トリゴヤが集まり、それにゲキカラを加えた四人が四天王と呼ばれるようになった。
 大島優子――十七歳の夏だった。


 「長くなっちゃったね……」
 ノンティの言う通りだった。知らないことがほとんどで退屈はしなかったが、その密度の濃さに、ヲタは少しのぼせたような気分になった。
 もう一人「大島」がいたことも、大島優子に挫折の過去があることも意外だった。ヲタはマジ女に入学してから半年ほどケンカに明け暮れ、学園内のことはなにも知らなかったに等しい。ラッパッパがマジ女を仕切っていることくらいは知っていたが、その過去はだれも教えてくれなかったし、ブルーローズの伝説を知ったのは入学してからだいぶあとだった。
 「なんでこんなに長々と話したかっていうとさ、あんたたちも特訓してるなら、あきらめるなって言いたかったのよ。優子だって最初はまいまいに負けた。最初から強いやつなんて、そうそういないよ……」
 「けど……あつ姐は九歳のときにゾクの総長を倒したって……」だるまが言った。
 「本当?」めーたんが驚いたような顔をした。「あつ姐がだれだかしらないけど……。あんたたちはあんの? そういうエピソード」
 ヲタはだるまと顔を見合わせた。
 ――ない。
 見事なくらい、なにもない。
 「ね、そんなのどこにでもある話しじゃないでしょ。あんたたちは平凡な人間なのよ。凡人がなにか成し遂げようとするなら、技術と根性がないとどうにもなんないのよ。優子は実は凡人だった。もちろん、努力したから、特訓したからってだれもが優子みたいにはなれない。でも、なれるかもしれない。そんなこと、やってみなきゃわかんないでしょ。だから、とりあえず、がんばってみなよ」
 そしてノンティは、ぽんと、ヲタの方を叩いた。
 「は、はい……」
 「ちゃんとがんばったかどうか、確認しに行くからね。卒業式の日に」
 「え?」――なぜ卒業式の日に……? ヲタは意味がわからなかった。
 「あたしたちさ、今でも毎年行ってんのよ。マジ女の卒業式」めーたんが答えた。
 「え、え……え?」
 「昔着てた制服着てね」シンディが笑う。「そろそろキツくなってきたけど」
 「そろそろ? とっくじゃない」
 「めーたんに言われたくないなぁ」
 「マジ女の卒業式って真面目に出る子少ないし、父兄もまず来ないし、入るときにチェックもされないし……。いつまで潜り込んでもバレないかって思ってさ」ノンティは豪快に笑った。「それで毎年泣いちゃうんだよねぇ。この歳になると涙もろくなってねぇ……」
 「ねぇ、そろそろ行こう」めーたんがノンティを急かした。「あたし、早く寝ないと今日、同伴入ってるから」
 「わかったよ。さーせん、おしゃべりで」ノンティは頭だけを鳥みたいに動かした。
 「それじゃあね、後輩っ」シンディがふざけた敬礼をした。
 「ありがとうございましたっ」ヲタは直立して、頭を下げた。だるまも倣った。
 三人は拝殿の左手に回った。そうか、あっちにも階段があるのか、とヲタは納得した。
 しばらくしてから、先に口を開いたのはだるまだった。「なんやったんや……いまのパイセンたち……」
 「いい話してくれたじゃねえか」
 「そやけど、重い話もあったで。まあ、あのパイセンが言ってた通り、おまえはなんの才能もないんやから、とにかく努力するしかないやろ」
 「そりゃそうだけど……」
 「だったら、今日はまだまだ始まったばかりや、階段、あと九往復するで」
 「覚えてたのかよ……」
 「当たり前や。ほら、行くで……」
 だるまに腰を押され、ヲタは渋々階段を下り始めた。けれども、ノンティの話を聞いた今、ヲタはさっきよりは少しだがやる気が増しているような気がした。
 たしかに、今日はまだ始まったばかりだった。



【つづく】


 ・某テレビドラマのパロディ小説です。パロ嫌いな人は読まないでね。
 ・あとから矛盾とか出てきたらこっそり書き直します。
 ・著者の上戸に格闘技経験はないので、おかしな箇所があったらこっそり教えてください。こっそり書き直します。
 ・わかる人にだけわかると思いますが、『覚悟のススメ』リスペクトしてます。

今年のベスト級映画を見た。

 08, 2010 21:46
 ただいま原稿執筆中につき詳しく語る時間がないんだけど、今日はすばらしい映画を見てきた。

 ■『ぼくのエリ 200歳の少女』
  http://www.bokueli.com/

 あ。予告編は軽くネタバレしているので見ないでね(笑)。
 今年のベストは『息もできない』がそのまま逃げ切ると思ってたけど、こんな伏兵がいたとは……。
 映画としては完璧なんじゃないだろうか、この作品。

 こんな傑作が、現在は東京と宮城でしか見られないなんて!!!

 下手したら、そろそろ終わってしまうかもしれないので、気になったかたはお早めに~。

締め切りは来週の水曜日。

 06, 2010 22:10
■とある素人のポッドキャスト聞いたら、「映画にはリアリティが必要」とか「映画は感情移入できるキャラクターがいないとダメ」みたいなこと言ってた。ま、それについては異論ないんだけど、この人、『告白』を褒めてるんだよなぁ……。あの映画のどこにリアリティがあって、だれに感情移入できるんだろう? 謎。

■明日は一日チユウ、原稿書きの予定デス。クーラー、ガンガンかけるぞ!!!

■日曜は、現行の目処がたったら『ぼくのエリ』を見てきます。

■神社の本、あれこれ読んでるんだが、なんかいろいろ複雑なこともあるようで……これはしばらく勉強の日々が続きそう。面白いからいいけど。

■『私の優しくない先輩』の原作はつまんなかった。

■来週の木曜か金曜あたりに、秩父の三大神社に行くつもり。だれか誘おうかと思ったけど、気を使うから一人にしよう。

■モノがわかっている人だとばかり思っていたけど、映画秘宝にいろいろ携わっている某ライターのツイッター発言にはガッカリしました。正義ってなに?

2010年7月に見た映画。

 02, 2010 22:40
 ■映画(新作)■
  『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』
  『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
  『トイ・ストーリー3』
  『私の優しくない先輩』
  『インセプション』

 ■映画(旧作)■
  なし

 ■新作順位■
  1『息もできない』
  2『第9地区』
  3『(500)日のサマー』
  4『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
  5『ブルーノ』
  6『ヒーローショー』
  7『アイアンマン2』
  8『ハート・ロッカー』
  9『クロッシング』
  10『川の底からこんにちは』
  11『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
  12『私の優しくない先輩』
  13『アウトレイジ』
  14『ラブリーボーン』
  15『インビクタス』
  16『渇き』
  17『プリンセスと魔法のキス』
  18『トイ・ストーリー3』
  19『プレシャス』
  20『シャーロックホームズ』
  21『インセプション』
  22『アリス・イン・ワンダーランド』
  23『涼宮ハルヒの消失』
  24『コララインと魔法のボタン』
  25『すべて彼女のために』
  26『マイレージ・マイライフ』
  27『ゼブラーマン2』
  28『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』
  29『時をかける少女』
  30『パレード』
  31『シャネル&ストラヴィンスキー』
  32『サロゲート』
  33『ウルフマン』
  34『武士道シックスティーン』
  35『書道ガールズ!』
  36『ニューヨーク、アイラブユー』
  37『告白』
  38『パーフェクト・ゲッタウェイ』
  39『シャッターアイランド』
  40『かいじゅうたちのいるところ』
  41『ACASIA』
  42『食堂かたつむり』
  43『矢島美容室THE MOVIE 夢をつかまえネバダ』
  44『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』

 7月はベスト10に入るようなものはなかった。残念。けど、この順位でいえば、20位くらいまでは見れば楽しめる良い作品です。あくまでも相対的なものなのであんまりアテにしないでね。
 てゆーか、こうして毎月書いてるけど、こんなのおれの好みでしかないし。
 けど、『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』の評価には絶対の自信を持ってる。今年、これよりつまらん映画は見ていない。『矢島美容室THE MOVIE 夢をつかまえネバダ』も相当ひどかったけど、一点だけ「あっ」と関心したところはあった。それに、これは最初から「そういうもの」として作っているから、マジレスするのは損だ。でも『踊る3』はそうじゃない。そうじゃないのに、あんなんだからダメなんだよ。なぜ、『踊る』ファンは「ひどい!!!」と声を上げないのか理解できない。ファンであればあるほど、あんなものを見せられたら怒らないといけないのに……。これは『踊る』に限らないけど、そうやって甘やかすからどんどんダメになっていく。おれ、『踊る』のテレビ版は好きですよ。それまでにない新しい刑事ドラマを作る、という気概が感じられたし、意味のある作品だと思う。あれ以降、ドラマにおける警察の描き方は変わったくらい。だからファンが多いのはわかる。だけど、繰り返すけど、好きだからこそダメなものにはちゃんとダメだと評価してあげることが大切なのでは?
 『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』はまだやっているので見てほしい作品。下ネタ全開で下品だけど笑える。ちゃんとふざける、というのはこういう作品のことを言うのだ。ある意味、ミステリ的な趣向もあって、そういう点もおれの好みに合っていた。一時は日本公開が危ぶまれたけど、町山智浩が紹介してくれたおかげもあって見られることになった。日本でもそこそこ入っているみたいなのでよかったです。一番好きなシーンは「シコシコしてるぜ」です。
 『トイ・ストーリー3』は見終わった後は「うーん……」と思って辛い評価をしてしまったけど、それは期待値が大きすぎたから。いま考え直してみると、そんなに悪い作品ではないなあ。ただ、おれが好きな『トイ・ストーリー』って、人間とおもちゃの関連性の物語なので、単なるおいかけっこみたいになってしまう展開はどうかと思った。いや、それがあるのはいいんだけど、長すぎ。『トイ・ストーリー3』だけじゃなくて『WALL・E/ウォーリー』も。『WALL・E/ウォーリー』は前半パートがすばらしすぎるだけに残念だった。あと、『トイ・ストーリー3』にも『WALL・E/ウォーリー』にも『カールじいさんの空飛ぶ家』にも言えるのは、あまりにも善悪を単純化しすぎ。ディズニーだから、と言われるかもしれないけど、子供が見るものだからこそ、もうちょっともやもやしたものを入れておいてもいいと思う。『ウルトラセブン』の名作「超兵器R-1号」みたいに。
 『私の優しくない先輩』の感想は前に書いた。それにしても、宇多丸の評論を巡って山本寛監督がブログで反論したのは面白かった。
 『インセプション』は『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』のハリウッド版リメイク。嘘。いろんな映画の影響を受けているみたいだけど、無知なおれがそういうのを分析するなんて無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。人の夢に入るっていうのは昔からよくあるアイディアだけど、金をかけて徹底的に作ってしまうのがすごい。この作品の欠点は、時間が長すぎることと、おれの隣に座ったジジイが上映中に何度も携帯電話をパカッと開いて見ていたので注意すると「物が落ちたから探していた」と言い訳をしたこと。
 以上です、キャップ。

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