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天皇賞・秋の回顧。

 31, 2010 17:09
 ◎ショウワモダンはまったくいいところない競馬。スタート良かったのになぜか下げて、最後はジャガーメイルに進路妨害される始末。
 ○アーネストリーと△ブエナビスタは予想通りの感じ。ブエナにあんな競馬されたらアーネストリーは勝ち目ないな。スミヨンはうまく乗った。
 ペルーサはアンカツの好騎乗が良かった。

天皇賞・秋、結論。

 31, 2010 07:09
 ◎ショウワモダン
 ○アーネストリー
 △ブエナビスタ
 △キャプテントゥーレ
 △アリゼオ

 本当はアーネストリーを本命にしたいけど人気してるので(笑)。でも、単勝5倍も付いてるから、保険で買っておこうかな。
 ショウワモダンは安田記念勝ち馬と道悪巧者ということで重い印にした。人気もないし。最内枠だから一発もあると思います。
 ブエナビスタは普通にやれば勝ち負けでしょうね。ただ不安要素もなくはない。なにが不安要素なのかはメルマガ読んでください(笑)。
 キャプテントゥーレはアグネンタキオン産駒なのが良いです。外枠なのが気になりますが。
 アリゼオはローテーションがいいですね。毎日王冠勝ち馬は天皇賞で好成績です。でも大外枠が……。

 以上、峯岸みなみはこれからずっとメガネをかけ続けるべき、と本気で思っている上戸の予想でした。
 ■純情堕天使―1■



 マユミ――内田眞由美は純情堕天使のメンバー九名とともに、亜理絵根女子高等学校の「アジト」へ向かっていた。
 学校の最寄り駅近くに、亜理絵根十傑集がたむろするアジトがあるというのがネズミの情報だった。そしてネズミはこの日、亜理絵根女子側にあえてマジ女の襲撃情報を流している。これはサドの指示だった。十名のメンバーから成る純情堕天使を、亜理絵根がどれだけの人数、どのような顔ぶれ、どんな戦い方で迎え撃つのかによって、いずれ来るであろう亜理絵根女子高等学校との全面対決の参考にするのが、サドの目的だった。
 マユミはこれこそ絶好の機会だと考えた。この亜理絵根との戦いの中で功績をあげ、ラッパッパに自分の存在を認識させるのだ。
 今でこそ、マユミは純情堕天使のメンバーに甘んじている。しかし、これは自分本来の居場所ではない。自分には、もっと高いところが似合うはず……マユミはずっとそう思っていた。
 ――私だってテッペンに立ちたいんだ。逆転したいんだ。
 純情堕天使はプリクラこと菊地あやかのチームであって、プリクラ以外のメンバーは構成員でしかない。はっきり言って、いまの自分は「ザコキャラ」だ。ナツミ、サキコ、トモミ、ハルカとともに並列で表記されるだけの扱いでしかない。ザコキャラは自分だけではない。ナツミには松原夏海、サキコには松井咲子、トモミには中塚智実、ハルカには石田晴香という名前があり、みんな生きている。しかし、この実力だけがものをいう学園において、チーム内にいるだけではいつまで経ってもザコキャラのままだ。
 だれかが言っていた。雑草という名の草はない――と。
 私は雑草じゃないんだ。マユミは強く思っている。
 根拠もあった。マユミの格闘スタイルは、小学生のころから習っている極真空手だった。今はまだ緑帯の三級だが、これからの研鑽次第ではマジ女一の空手使いになれるだろう。気持ちでも、だれにも負けない自信があった。
 残念ながら、現時点では実力が伴っていないことは認めざるを得ない。アンダーガールズ程度なら勝てる自信はあるが、サドとタイマンを張っても勝てる見込みはゼロに近いだろう。でも、いずれはサドを破った前田敦子を倒し、そして今だラッパッパに君臨する大島優子からテッペンの座を奪うのだ。
 自分ならできる。
 そもそも、喧嘩しか能のない連中が集まった学校に入ったというのに、テッペンを狙わなくてどうするのだ。最強軍団ラッパッパに入りたい、ではダメだろう。それではラッパッパに入ることすらできない。テッペンを獲りたいと思うからこそ、ラッパッパにも入れる。目標は常に一段も二段も高く持たなくては達成できない。
 功績は対外的なものほど認められやすい。前回の対矢場久根戦では出番がなかったマユミだが、今回の対亜理絵根戦では、こうして戦いの前線に出られることになった。このチャンスは絶対にモノにしなくてはならない。
 「アジト」は駅から五分ほど歩いた、雑居ビルの地下にあった。商店街の裏手に位置するその通りには人通りも多く、純情堕天使のメンバーたちは街の風景からやや浮いていた。
 地下へと伸びる階段の横には、「テナント募集中」という貼紙があった。これもネズミの情報通りだった。
 「さてと……」プリクラは階段を見下ろした。「入る前に確認しておきましょう。私たちは、相手の人数も顔ぶれもわからないまま突入しようとしている。こちらの手勢は十人。入り口は狭いから、一人ずつしか入れないでしょう……」
 と、そのとき、元チームホルモンのバンジーが右手を上げた。「先鋒は、あたしらに行かせてくれ」
 バンジーの後ろでは、アキチャ、ウナギ、ムクチがうんうんと頷いている。
 プリクラは考えているような表情になった。
 ――出しゃばりやがって……。
 マユミはいい気分がしなかった。先鋒はケンカの花……言わばおいしい役回りだ。純情堕天使に吸収されたチームのくせに、それをやりたいなんて。
 「おいしいところを奪っちまうみたいで心苦しいけど、今回は不安な要素が大きい。こんな言い方はしたくないが、痛い目に合う危険はあたしらが受け持つ。あたしらを受け入れてくれたあんたたちに礼がしたいんだ」
 「なるほど。たしかにそうかもしれませんね」プリクラは言った。「他にいなければ、バンジーさんたちにやってもらいましょう」
 マユミは手を上げるべきかどうか迷った。だが、たしかに今回は扉の向こうにどれだけの相手がいるかわからない。最初の一撃でやられてしまっては、テッペンが遠ざかってしまう。いまは安全にいくべきだろう。
 マユミは黙っていた。
 「決まりですね。では、バンジーさんたちに行ってもらいましょうか」
 プリクラの言葉を聞き終らないうちに、バンジーたちは階段を降りていった。
 マユミはなにも言わず、そのあとに続いた。純情堕天使の中では、いつもマユミが先陣を切ることになっている。前に四つの「壁」があることを意識すると、自然と拳に力がこもった。このドキドキする感じが、マユミはたまらなく好きだった。
 階段を降りきった踊り場の向こうの扉を、バンジーが手前に開いた。室内の明かりが漏れ、暗い踊り場を照らした。背の低いマユミは、踊り場に降りず、階段で立ち止まり、少し上からその様子を見ていた。
 「ちょっと邪魔するぜ……」バンジーが室内に入っていくと、アキチャ、ウナギ、ムクチも中へと消えた。
 マユミはやや駆け足になり、自分も四人の跡を追った。
 その地下の部屋の広さは二十畳ほどだった。元々は時代遅れの喫茶店だったらしい。壁には洋風の絵画が飾られ、支柱には壁紙と同じモチーフのモダンな彫刻が刻まれていた。
 扉の正面の壁際には、テーブルや椅子が乱雑にうずたかく積まれ、ここが廃屋化していることを示していた。そして、そこに少女が二人いた。
 一人はテーブルの上に、一人は腕を組んで壁にもたれかかっている。どちらも亜理絵根女子高等学校の制服を着ていた。
 座っている少女は曲げた右ひざに肘を乗せ、左手で茶色い壷を抱えている。左目の下の黒子と、セミロングのストレートな黒髪は、彼女のやや暗い表情と相まって、実際よりも高い年齢を想像させた。まるで主婦がいたずらで娘の制服を着ているような感じさえする。
 こちらに気づいた彼女だが、まるで動じない様子で壷の中に手を入れると、中から梅干を取り出し、口に入れた。瞳は確かにこちらに向けられているものの、ピントがどこにも合っていないような目つきだった。
 梅干を含んだ口が、くちゃくちゃと音を立てた。
 壁にもたれた少女は、その様子をにやにやとした目つきで眺めていた。やがて挑発的な視線をマユミたちに向けると、鼻で軽く笑った。
 派手な「お出迎え」を想像していたマユミは拍子抜けしたが、それはバンジーたちも同様のようだった。二人の少女の薄気味悪さも相まって、室内には重苦しい空気が漂った。
 だが、バンジーはそれを打ち破るように、大きな声を出した。「おやぁ……お仲間は買いだしでも行ってるのかな、亜理絵根のお嬢さん?」
 黒子の少女は答える代わりに、ペッと梅干の種を床に吐いた。そして、間髪入れずにまた壷から梅干を取り出した。
 「おまえら二人だけか……?」ウナギが訊ねた。
 「他のやつらはビビって逃げたんじゃね?」
 ナツミが顎を突き出して茶化すと、サキコとトモミとハルカが笑った。
 「とにかく、やっちまえよ、バンジー」アキチャが促した。
 「――だな……」バンジーは指を鳴らした。
 そのとき、黒子の少女が口を開いた。「――てめぇらは、うるさい……」
 マユミはその声に、少し戦慄を感じた。「てめぇら」ではなく、「てめぇらは」という言葉のセンスが気持ち悪かった。『アイアムアヒーロー』というマンガで、ゾンビ化しつつある人間が話す言葉を連想した。
 ――壊れてる?
 マユミは本能で危険を感じ、一歩後退した。
 「――やっちゃったらいいですか、まいぷるさん?」黒子の少女は梅干の入っている壷をテーブルの上に置き、お尻を下ろし、立ち上がった。
 「いいよ、うめ子」まいぷるは腕を組んだまま頷いた。



 【つづく】
 四回連続で落ちていたので、3年ぶりの参加になります。長かった……。
 以前、新作もロクに出さないサークルが当選しているのを見たときははらわた煮えくり返りましたよ(笑)。ま、それも過去の話ですが。

 『濡れ娘。』 12月31日金曜日、東地区“メ”ブロック−34a

 新作のCD写真集を出します。すでにダウンロード販売はしていますが、ROM化して1枚1000円程度のものを持っていく予定です。ダウンロード販売していないものも、時間があれば出します。

 で、メインはブログに書いている小説、『マジすか学園vsありえね女子高 AKB48×アイドリング!!!』の同人誌化です(笑)。まだ完結していないけど、なんとか当日には出したい。
 というわけで、これから先はブログでの発表が極端に遅くなる可能性があります。
 ブログに「連載」みたいなかたちで書くのと、一本の小説として書くのでは、ちょっと意味合いがちがうんです。連載の場合は「引き」が大切なので、そういったことを念頭に置いて書くわけですが、最初から書き下ろす場合はそれを意識しません。そして、後者のほうが効率よく書けます。
 いまだに「マジすか学園 小説」などのキーワードで検索して当ブログに訪れていただく人もたくさんいるため、どうするべきか悩みました。が、まず作品としてきちんとしたかたちにするべく、ブログでの発表よりも小説の完成を優先させていただきます。
 とりあえず、いま構想している「第一部」までは、今までどおりの発表の仕方をします。こちらはあと三回か四回程度で終わると思います。
 そしてその先は、もしかしたら年内の更新をしないかもしれません。とにかく期日が迫っているので、今までのようなペースで書いていたら終わらないことは目に見えています。
 拙い小説でも、楽しみにしてくださっている方々にはもうしわけないですが、ご容赦ください。
 勘違いしないでいただきたいのですが、これはコミケで本を売りたいためではありません(いや、もちろん売れてほしいですが)。第二部は本で読め、ということではなく、ちゃんとブログでも全編発表します。ただ、その時期が遅れる、ということです。

 以上、よろしくお願いいたします。
 さて、見てきましたよ、『インシテミル』。

 いやー、ひどかった!!!

 原作はけっこう前に読んでたんで、ストーリー自体がどれほどひどいかってのは知ってたけど、それにしてもこんなにひどいとはねぇ……。
 完全ネタバレでディスシテミルので、見てない人は読まないでね。

 まず原作の小説を読んだときに思ったのは、まあ、殺人ゲームみたいなのはマジ食傷気味だけど、それはいいよ、まだ。でも『このミステリーがすごい』とかでベスト10に入ってるんだから、そんじょそこらのミステリモドキとはちがう、ロジック豊かな作品なんだろうなあ、と期待していたわけですよ。
 ところが高額アルバイトの自給11200円って数字にはまったく意味がないし、綾瀬はるかは出てきた瞬間に怪しいし(小説と映画をあえて混同)、凶器につけられている過去のミステリ小説への関連付けはまったく意味がないし、犯人は複数だし、タイミング良く自殺するやつがいるし、なによりあんなことをしている機構なんて存在できるわけがない。みんな、よく考えてくれよ。現代日本で、人を集めて殺し合いをさせてるんだよ!!! しかも生き残った参加者は、金もらって普通に解放してるし。おれだったらその足で警察行くね。あんな機構が存在できるわけがないんだから、そもそもこんな物語成立しないわけですよ、どん!
 ウィキペディアをコピペすると、

 2007年度の第8回本格ミステリ大賞の最終候補作に残ったほか、各ミステリのランキングでは本格ミステリベスト10で4位に、週刊文春ミステリーベスト10で7位に、このミステリーがすごい! で10位にランクインし、島田荘司監修の黄金の本格にも選ばれた。

 だって。この国のミステリはどうなってるんだ? ま、国内物の新作ミステリはもう読むことないだろうからいいけどさ。好きにやってください。

菊花賞結論。

 24, 2010 09:28
 ◎ビックウィーク
 ○アロマカフェ
 △トレイルブレイザー、シルクオールディー、トウカイメロディ。
 ローズは……うーん、どうしよう……(笑)。
 ■特訓―3■




 頭を激しく揺さぶられていた。
 最初は夢の中の出来事だと思っていた。顔の見えない不良にカツアゲされている。そいつはヲタの髪の毛をつかみ、なにかをわめいているが聞き取れない。ヲタは泣きながら許しを請うていた。
 「――早よ、起きるんや。もう朝やで」
 だるまの声だとわかったのは、しばらく経ってからだった。
 自分が家の布団で寝ていないことに気づき、焦ったような気分で目が覚めた。腕がしばられたように動かなかったのは、寝袋に入っているからだった。脚も同様だった。
 目を開けると、だるまの顔があった。
 「起きたか」
 「――んだよ……朝っぱらから、そのデカい面って……」
 見回すと空はまだ少し暗く、やや湿っぽい空気に包まれている。
 「さっさと起きて、まずはひとっ走り。階段下りるで」
 「まだ脚、痛てぇし、ちょっと待てよ……」
 「十分で準備するんやで。暖かいココアも入れてあるから、それ飲んで元気つけろや」
 だるまはヲタの頭の近くにマグカップを置いた。湯気が立っていて、ほんのりと甘い匂いが漂ってくる。近くにはキャンプ用のガスバーナーコンロがあり、その上にはステンレス鋼の鍋が置かれていた。
 「飲んだら準備体操や」だるまは言い残すと、拝殿の廊下を向こうへと歩いていった。
 ヲタはもぞもぞと寝袋から上半身だけ出して、まだぼんやりとした頭で境内を眺めた。寝袋は防寒仕様だったがそれでも体は冷えていた。マグカップを手にすると、それはとても暖かく、顔を撫でる湯気が心地よかった。
 ココアを一口飲むと、ヲタはバッグを手元に引き寄せ、携帯電話を取り出した。
 電源を入れようとボタンに指をかける。ここにいることはだまる以外に知らせていないから、たとえばバンジーから居場所を訊ねるメールや、ムクチからの無言の留守電が入っているかもしれない。
 だが、ヲタはボタンにかけた指に、力を込められなかった。
 それを押したら、元に戻ってしまう気がした。
 暗いままの小さなディスプレイに映りこんだ、寝起きのだらしない自分と目が合った。
 電源ボタンから指を離し、しばらく携帯電話を見つめる。
 少し考えてから、やがてそれをバッグの中に戻した。
 そしてココアを飲み干し、拝殿の正面で柔軟体操をしているだるまの元へ向かった。


 体をほぐしたあとは、階段を下りた。昨日酷使した筋肉がまたも抵抗したが、ヲタはそれを口に出さず、黙々とこなした。痛みを言葉にすると、余計に苦しくなるような気がした。麓の公園で洗顔や歯磨きをしてから町まで歩き、早朝から営業しているスーパーマーケットで一日分の食品を買い求めた。馬路須加女学園とは逆方向へ向かったため、だれかと出くわす心配はなかった。
 往復でたっぷり一時間半はかかった。
 神社に戻ったころにはすっかり体は目覚め、なんなら今すぐケンカができるくらいだった。参拝に来る人もぽつぽついて、二人は好奇な目で見られることもあったが、次第に気にならなくなった。元ブルーローズのメンバーには、今日は会わなかった。すれちがったのだろう。
 朝食のおにぎりを食べたあと、二人はまた階段の上り下りをした。四回往復したあとは、昨日の午後におこなった筋肉を鍛えるトレーニングを始めた。たった一日で筋肉が鍛えられるわけもなく、ヲタはまたもや自分の基礎体力のなさを思い知らされた。腕立て伏せをしたときは、腕の付け根の筋肉が痛み出した。腹筋に力を入れると痛いというよりは硬さを意識させられた。それでもすべてのトレーニングで、ヲタは昨日より多くの回数をこなせた。微々たる変化だが嬉しかった。
 「やればできるやないか。今までやろうとしてなかっただけや」
 だるまの辛らつな言葉も素直に聞けた。
 遅めの昼食を摂ったあとは、またもや階段の上り下りをした。昨日ほどではなかったが、時間が経つにつれ、キツさは増した。一回あたりの時間はだんだんと延び、夕方には朝の倍の時間が必要になった。
 だが、泣き言は吐かなかった。
 息が切れ、苦しくなったとき、ヲタはチームホルモンのみんなのこと、そしてプリクラのことを思い出した。自分の勝手な気持ちでチームを解散してしまい、みんなに迷惑をかけてしまったことは後悔している。プリクラには、みんなを引き取ってくれたことに感謝さえしている。こんなヘタレなリーダーより、プリクラのようなしっかりとしたリーダーのほうがみんなのためになるだろう。けれども、チームホルモンを解散したことが、あの時点でベストの選択だったのかはわからない。それは今後の、自分の努力しだいだろう、とヲタは思う。事の良し悪しはずっとあとになってからでないとわからないものだ。
 だるまはヲタのペースが落ちると発破をかけた。「やらんよりはマシやけど、そんなにゆっくりやったら日が暮れてまうで。さっさとしぃや」
 「――っせぇなぁ。やってんだからいちいち言うなっての……」
 そう返すヲタは、苦痛に歪みながらも笑顔を作った。
 午後の筋トレ一時間と、ノルマの階段十往復が終わったのは、夕日が街の稜線に沈みかけていたころだった。鳥居の下で寝転ぶと、汗まみれになったチームホルモンのジャージから汗の臭いが漂ってきた。しかしそれは不快ではなかった。今日一日、自分ががんばった証だった。
 体は無論、何度も悲鳴を上げた。昨日同様、あちこちの筋肉がぱんぱんに張っている。特に脚の疲労はひどかった。
 「今日は泣き言、口にせんかったな」だるまが意地悪そうに言ってきた。
 「言ったって仕方ねぇしな」
 「そうやな。弟子の成長は師の喜びや」
 「弟子になった覚えはねえ」
 そう言ったとき、ヲタの腹が情けない音を立てて空腹を知らせた。
 だるまは豪快に笑った。「なんや、ヘタレはヘタレらしい音を立てるんやな」
 「うるせえなぁ。いいから、飯、食おうぜ」
 そして二人は夕食の支度をした。今日はだるまが、ガスバーナーコンロでコーンスープを作ってくれた。他には買い置きのおにぎりだけだが、二人はとりとめもない話をしながら、ゆっくりと食事を楽しんだ。
 そのあと、銭湯に行くとき、ヲタはあることに気づいた。「あっ。損した」
 「なんや、損て」
 「今日、もう十回往復しただろ。今から風呂行くならもう一回往復することになるよな」鳥居の下から暗い階段を見下ろして、ヲタは言った。
 「なんや、そんなことか。そしたら一回余分に鍛えられるんやから、損やなくて得やないか」
 「明日のノルマから一回引くぞ」
 だるまは昨日、途中でやめたら翌日にその分を持ち込むと言っていたのだから、余計にやったのなら差し引いてくれないと理屈が合わない。
 「まあ、それもええけど……ホンマにええんか?」
 「いいに決まって……」ヲタは言葉を飲み込んだ。昨日はあれほどキツかった階段トレーニングを、自分はもうこなしているのだ。それも、これから一回余計にしようとしている。「――わかったよ。いいよ、引かなくて」
 「それでこそ、我が弟子や」だるまは階段を下りはじめた。
 「だから弟子じゃねえっつーの」
 ヲタはだるまに続いた。
 
 

 【つづく】

無知な人。

 17, 2010 21:30
 AKB48関係のmixiニュースを日記に引用している人の、けっこう多くがAKB48のことをなにも知らないと書いてる。しかも噂話レベルや、ちゃんと調べればわかるようなことを確認もせずに。
 恥ずかしくないのかね、自分が無知だって公言しているのに。
 ■策謀―2■



 
 真新しい亜理絵根女子高等学校の校舎を見上げると、五階の渡り廊下に設置された「球体」が今日も陽光を反射し、輝いていた。
 校舎は三階部分までは普通の学校となんら変わるところはないが、その上は東棟と西棟に分かれており、五階部分が中空の渡り廊下で繋げられている。球体はそのほぼ中間に位置し、この校舎を一目見れば忘れられない存在にしていた。
 ネズミは校門を通り、校庭から校舎に向かった。下校時刻のため、校庭にはたくさんの生徒たちが校舎から吐き出され、思い思いのおしゃべりに興じていた。ネズミの服装は亜理絵根女子高等学校の中間服を模していたため、彼女に注意を払う者はいなかった。
 校舎に入ると、ネズミは迷うことなく四階を目指した。あの球体こそ、ネズミの目的とする場所だった。
 階段を何度も折れ曲がり、ネズミは四階に着いた。渡り廊下の壁は左右ともにガラス窓になっていて、街の景色を一望できた。左手には海、右手には新興住宅街とショッピングセンターが見える。馬路須加女学園とは雲泥の差だ。校舎の窓から見えるのは、何の変哲もない殺風景な田舎の町並みだけ。洗練されたものなどなにもない。
 校内の様子もちがう。至るところに落書きのある馬路須加女学園だが、ここにはそんなものはひとつもなかった。教室の窓ガラスは一枚も割れていないし、廊下に廃材や武器になるようなガラクタも転がっていない。廊下や教室には華やかな嬌声が響いている。
 渡り廊下の先に、球体への扉があった。嵌め殺しのガラス窓からは、近くで見ると異様なほど大きい球体の外郭の一部分が見える。
 その扉には「生徒会」というプレートが付けられていた。ネズミが三回、二回、一回とノックすると、中から扉が開いた。
 「どうも……」ネズミは笑顔を作った。「フォンチーさん、いますか?」
 扉を開けた大川藍は、黙って顎をしゃくった。
 二十畳ほどの広さの生徒会室は整然としていた。窓のない側の壁にはパソコンが置かれ、その横にはコピー機が設置されている。棚には議事録やその他の資料がぎっしりと詰まっていた。壁沿いに並んだ机の上には各自のカバンや、持ち寄ったスナック菓子、ペットボトルが乱雑に置かれ、ネズミはここだけには人間味を感じた。
 部室には森田涼花、河村唯、長野せりな、酒井瞳、大川藍、橋本楓がいすに座って談笑をしていた。ネズミは彼女たちの顔はもちろん、生徒会役員全員を知っている。
 ネズミは大川藍に先導されながら、彼女たちの冷たい視線を感じていた。この視線は矢場久根女子高校を利用していたときにも受けたことがある。ネズミにとって、これはむしろ歓迎するべき状態だった。ネズミへの警戒は、その力を認めているのと同じだ。大したことがないと考えられているのなら、ここまでの敵意は抱かないだろう。
 心地よい緊張はネズミを上機嫌にさせた。
 大川藍は、生徒会役員室とプレートで表示された扉の前で立ち止まった。そしてノックをすると、「ネズミが来ました」と言って下がった。
 「入れ」中からくぐもった声がした。
 ネズミはやや緊張した。ここが執念場だ。ここでしくじったらすべてがオジャン。いいか、焦るなよ……。そう自分に言い聞かせて、ネズミはスカートのポケットのスタンガンを、まるでお守りのように握った。
 「失礼っス」
 ネズミはドアを開け、中に入った。
 正面には大きな窓があり、夕焼けが室内を橙色に照らしている。その前にあるソファに亜理絵根女子高等学校生徒会長であるフォンチーが座っていた。ブレザーではなくテカテカした生地の青いスカジャンを着て、こちらに向かって脚を大きく広げ、両膝の上に肘を乗せている。逆光でどんな表情かはわからなかった。
 ソファの横には、遠藤舞、谷澤恵里香、外岡えりか、横山ルリカの亜理絵根四巨頭が立ち、全員の視線がネズミを捕らえていた。そこには、どう好意的に解釈しても友好的な光は点っていなかった。
 そしてフォンチーの前の床には、朝日奈央が土下座をしていた。普通の土下座とちがっているのは、朝日奈央の両手首が背中で手錠に繋がれていることと、それが天井に吊り下げられているロープによって持ち上げられていることだった。背後からなのでよくわからないが、頭の高さから考えて、額は完全に床についているように見える。
 朝日奈央がうめいた。だれかが入ってきた気配を察したのだろう。
 夕日のまぶしさに目を細めて、ネズミは腹の中で笑った。なにをしてこんな目にあっていうのか知らないが、ヤンキーが苦悶している姿は笑える。他人に暴力を振るう人間には一片の同情もない。本当は声を上げて爆笑したかった。
 フォンチーが顔を上げた。「――今日はなに?」
 「ラッパッパが、また動くんスよ。それをお知らせに……」
 ネズミはほとんど意識しないまま、スカートの上からスタンガンの入っているポケットの部分に触れた。なにかでしくじり、自分が朝日奈央と同じ境遇に置かれないとは限らない。スタンガンの強化プラスチックのボディは、スカートの布越しでもネズミに安心感を与えてくれた。
 「今度はだれが」
 「純情堕天使というチームっス」
 「純情堕天使……? あんたが持ってきた資料の中にはなかったけど」
 フォンチーは広げていた右足を、朝日奈央の頭にまるで踵落しをするような勢いで思いっきり落とした。うぐっという「音」がする。フォンチーはそれをまったく無視して脚を組んだ。
 もちろんネズミも、そんなことなどなかったかのように、カバンの中から十枚の紙を取り出し、フォンチーに渡した。「停学になってた菊地ってリーダーが、最近戻ってきたんスよ。それで再結成したってわけで……」
 それは純情堕天使のメンバー全員のプロフィールをまとめてたもので、純情堕天使入りした元チームホルモンのメンバー四人のデータもある。写真、名前、年齢、学年と組、ケンカのスタイル、交友関係、ネズミによるランク付けが載っている。純情堕天使内でのランクは、プリクラ→バンジー→マユミ→ナツミ→アキチャ→サキコ→ウナギ→トモミ→ハルカ→ムクチとなっていた。ナツミ以下の実力はどんぐりの背比べ状態だが、目立たない存在ながらも極真空手使いのマユミは要注意人物だった。
 フォンチーはそれを見ながら、ネズミに訊ねた。「強いの?」
 「それほどでも……」
 「人数は……九人か。多いね」
 「チームホルモンを吸収したんスよ」
 「ああ……」フォンチーは納得したようにうなずきながら、「学園一のヘタレが頭張ってるチームかぁ。ふぅん……吸収されたんだ」
 「そのヘタレは純情堕天使には入りませんでした……今は学校に来てないっス。辞めちまうかもしれません」
 「ま。そんな奴のことはどうだっていいか……その純情堕天使って、強くはないといっても人数が多いなら、こちらもそれなりの数をそろえないと……」フォンチーは純情堕天使のデータを谷澤恵里香に渡した。「だれに行かせる?」
 「私なら十人程度は軽い……」遠藤舞が言った。
 「まいぷるなら百人を相手にしたって勝てるだろうけど」フォンチーがさえぎった。「あたしたちは力比べをしてるんじゃない。面白くなきゃ意味ないでしょ?」
 「たしかにね」遠藤舞が口だけで笑った。
 フォンチーは今度は谷澤恵里香を見て、「谷澤じゃ……ダメだな」
 「なに言ってんの。任せなさいよ……って言いたいけど、いくらなんでも十人相手はちょっと、体持たんわ」谷澤恵里香は照れ笑いをした。
 「とのとのとルリカは」
 「あたしはいいけどさ……」外岡えりかは隣の横山ルリカを見やった。「ルリカはどう」
 「二対十ってこと? よくないよ、そんな卑怯な戦い。相手に失礼だし」
 「ほらね」
 「それじゃあ、十傑集にやらせよっか。人数も合うし」フォンチーは事も無げに言う。
 「十人もいらないでしょ」
 「まだ戦ってない子、いたっけ?」
 「たしかうめ子が……」
 「うめ子か……」フォンチーは組んでいた脚をほどき、立ち上がった。朝日奈央の頭の上に乗っていた脚が下ろされ、ふうーっという「音」がした。
 そのとき、ネズミは今日初めてフォンチーの顔を見た。今までの軽い口調からは想像できない、戦略家の表情がそこにあった。「やりすぎやしないか、あいつ」
 「大丈夫だと思うけど」外岡えりかが答えた。
 フォンチーはほかの三人を見回した。全員が無言で頷いた。
 「それじゃあ、純情堕天使はうめ子にやらせよう」
 フォンチーがネズミに近づき、肩を抱いてきた。女に必要以上に肌を触れられるのは嫌悪感があったが、ネズミはそれを表に出さないように我慢した。「あんたはいつも通り、こちらの動きをラッパッパに流して。場所はあとでメールする」
 「了解っス、フォンチーさん」ネズミはにやりと笑った。
 「それと……」フォンチーはそこで一旦言葉を区切って、耳元でつぶやいた。「――ぜってー裏切ならいようにね」
 「とんでもないっスよ、裏切るなんて……」
 裏切るつもりはなかった。馬路須加女学園だって矢場久根女子高校だって裏切ったつもりはない。馬路須加女学園がどこかの学校に狙われるのは不良どもの集まっている学校の常だし、矢場久根女子高校は総長の力不足が敗北の原因だ。
 ちょっと考えればわかることだ。ネズミのような小娘一人が動いたところで人の気持ちなんてわずかしか動きはしない。馬路須加女学園も矢場久根女子高校も亜理絵根女子高等学校も、元々そういう気質を持っているのだ。やつらとこいつらはケンカが好きなのだ。隙あらば他人を傷つけ、優位に立とうとするという、ヤンキーどものどうしようもない虚栄心に、ネズミは吐き気さえ覚える。本当に、そんなやつらは死ねばいいと思う。
 ネズミがやっていることは、それをくすぐったり、背中を押したりする程度のことだ。それでなにか起こったところで、それがネズミのせいだと言えるだろうか。
 「知ってるんだよ、あんたが矢場久根相手になにしたか」
 「それは光栄で……」
 肩に乗っていたフォンチーの腕が、蛇のように首に巻きついた。かと思うと、それはあっという間にネズミの首を締め上げにかかった。痛いというよりは苦しく、血液の循環が喉の辺りで渋滞を起こしはじめた。顔面が熱くなっていくのがわかる。息ができなくなりそうだ。
 「――散々、バカども煽って、いざとなったら脱兎のごとくいなくなったそうじゃん」
 「それは……誤解ッスよ、あれは、グッ……」
 さらに締め付けられ、ネズミは言葉を発することができなくなった。
 一日に二度も同じような責めを受けるとは……。ネズミは自分の油断を悔いた。
 アレを使うべきか。ここで亜理絵根にわずかでも歯向かうのはよくないが、このままでは落とされてしまう……。そんなみっともない姿を見せるわけにはいかない。暴力には毅然とした態度で立ち向かわなくてはいけない。
 ネズミは躊躇したが、念のためスカートのポケットに手を入れた。指が金属の硬さに触れると、不思議な安心感があった。
 だが、それは一瞬だけだった。
 フォンチーの手が、スタンガンに触れたネズミの手のひらに重ねられたのだ。
 ネズミは心底焦った。
 「こんなもん持ち込んで、いい度胸してるね。でも、気づかれないと思った?」
 フォンチーはネズミにスタンガンを握らせ、手のひらを重ねたままポケットから取り出した。
 息苦しさはクライマックスに達していた。自慰のとき以上に息遣いが荒くなった。フォンチーはそれを察しているのか、ときどき腕の力を緩め、空気が吸える幸せをネズミに実感させた。しかし、一瞬後には再び万力みたいな締め付けがネズミを襲った。
 「自分の肉体に自信がないやつって、こうして武器を持ちたがるんだよね。うん、いいことかもしれない。だって弱いんだから。でもさ、ひとつ大事なことを忘れてるよ。肉体は奪われないけど、武器は奪われる。そして奪われた武器は、強力であればあるほど、恐怖が増すって……」
 フォンチーは、ネズミの指の上から、スタンガンのスイッチを押した。威嚇にも効果的な大きな音と同時に、突き出した二本の電極の間に放電光が放たれた。
 四巨頭全員が自分を冷笑していることに、ネズミは気づいた。。
 「これ。試してみようか……」
 フォンチーはネズミを抱いたまましゃがみこんだ。そして、背中を向けている朝日奈央のミニのプリーツスカートの上に、スタンガンを押し付けた。えっ、と発した朝日奈央は、次の瞬間、雷に打たれたように尻を跳ね上げ、絶叫した。倒れるときにミニのプリーツスカートが大きく広がり、ピンクの下着が丸出しになった。
 「やばいじゃん、これ……。いつも持ち歩いてんの?」
 攻撃が自分に向けられなかった安心感と、だが、まだこのイベントは終わっていないという恐怖感の入り混じった感情で、ネズミの脚は小刻みに震えだした。
 「さっきから不思議に思ってるでしょ、奈央がなんでこんな目に合ってるのか……。言っとくけど、これ、奈央が自分でしてくれって言ったことだから」
 ネズミは目を見張って、倒れた朝日奈央を見た。
 「苦しければ苦しいほど、痛ければ痛いほど、人間は助かった瞬間に、生きているすばらしさを実感できる……。そう思わない?」
 ネズミは無言のまま、朝日奈央からフォンチーへ視線を移した。フォンチーの目には、伏臥した朝日奈央に対する、ある種の恍惚感と羨望と嫉妬の入り混じった光があった。
 「なんの刺激もない日常でも、痛みを加えるだけで、解放されたときのカタルシスを生んでくれる。あんたは普段、生きていることに感謝してる? してないでしょう。それは痛みが足らないから。痛みは大きければ大きいほどいい。死の淵に近づけば近づくほど、生きていることを実感できる。あんたにわかる?」
 フォンチーはネズミの手とともに、スタンガンを目の高さまで持ち上げた。そして電極部分を、ネズミの額に付けた。心臓が破裂しそうに激動したが、ネズミは恐怖で抗えなかった。中学生のときの嫌な思い出が脳裏に浮かんだ。髪の毛を鷲掴みにされたこと。背中に蹴りを入れられたこと。男子の前で突然スカートをめくられたこと。描いたイラストをノートから破られたこと。頭に思いっきりバレーボールが当てられたこと。体育の時間が終わって着替えに戻ったら制服がチョークの粉で真っ白になっていたこと。机の中に無修正の男の裸の写真が入れられていたこと。カバンや上履きや体操着がゴミ箱に捨てられていたこと。
 「これ、瞼に当ててスイッチ押したらどうなるかな? やってみてもいい?」
 だめですだめですっ。
 だめですだめですだめです。
 だめですだめですだめですだめですだめですだめですだめですだめです。
 フォンチーはスタンガンをネズミの額から右目に移動し、押し当てた。電極部の硬い感触を眼球で感じた。
 「あんたの顔、CGみたいに整っていて肌もきれいだよね。自信あるでしょ、自分の顔に。自分はかわいいんだって自信が。そりゃそうだよね、たしかにかわいいもん。アイドルになったら売れるよ、あんた。けど、それがどれだけ幸せなことか、本当にわかってる? あんたみたいにかわいくないだけで、死にたくなるような毎日を送ってる子はたくさんいるの。わかんないよね、そんなブスたちの気持ち」
 ネズミは小さく、首を横に振った。
 閉じた瞼から決壊したように涙が溢れた。鼻水も。よだれも。そして、股間に生暖かい感触があった。それは靴下にも染みてきた。
 その瞬間、生徒会準備室に爆笑が起きた。
 四巨頭たちが嬌声を上げていた。
 「漏らしたよ、この子」だれかが言った。
 「フォンチー、やりすぎっ」別のだれかが言った。
 ――と、スタンガンが瞼から離された。
 いまや、それは完全にフォンチーの手中にあった。ネズミの握力はゼロになっていた。奪われることに抵抗できなかった。
 「どう? 今の気分……」フォンチーはスタンガンを顔の高さからゆっくりと下ろしていった。「生きてるって実感できるでしょ。最高でしょ。これが幸せってやつ。覚えといて」
 たしかにほっとした。だが、まだ心臓は早鐘を打っているし、脚の震えも止まっていない。もう一度、スタンガンが瞼に押し付けられないとは限らないからだ。
 「でも、あんただけそんな気持ちになれるなんてズルいわね」
 そう言ったフォンチーは、信じられない行為にでた。
 スタンガンを自分の腹に押し当てたのだ。
 「スタンガンは初めて……どんなだろう……。ああ、どきどきする……」
 フォンチーの顔は恍惚感で満たされていた。
 ――狂ってる。
 ネズミは正視できなかった。床に視線を落とした。
 やがて、バチッという大きな音とともに、フォンチーの悲鳴が上がった。
 直後、何かが床に倒れる音がして、衝撃を感じた。
 本当にやった……。バカだバカだバカだ。
 そんなことをしてなんになる? 痛いだけ。だれも得をしない。それどころか自分が傷つくだけだ。
 まったく無意味で、まったくデタラメで、まったくの暴挙……。
 そしてネズミは恐々、顔を上げた。
 リノリウムの床に倒れたままのフォンチーは、頬を上気させている。息遣いも荒く、ここだけ切り取って見た人がいれば、自慰が終わったあとだと思うにちがいない。
 そのとき、袖をまくっていたフォンチーの肘から先が見え、ネズミはぞっとした。そこにはおびただしい数の傷があった。切り傷、すり傷、裂傷、刺し傷、根性焼きの跡、蚯蚓腫れ、生乾きのものもあれば、瘡蓋になっているもの、そして縫い目もある。
 「――すごいっ……痛すぎだよ、これ……」
 倒れたまま言いながら、フォンチーはネズミに向かってスタンガンを床の上で滑らせた。それはネズミの膝の手前で止まった。だが、ネズミはそれに触りたくなかった。さっきまで自分の手の中にあり、あれほど頼もしかった物体が、いまはおぞましい存在でしかなかった。
 「――もう、ちまちました戦いは、純情堕天使とやらでおしまいだ……」唐突にフォンチーが言った。「一週間後の来週の金曜日……行くよ、あんたの学校……」
 ネズミは震えた。恐怖からではない。ようやくそのときが来た、という喜びからだった。
 「前田、敦子だったか? マジ女最強の女は……」
 「そうっス」ネズミは小さな声で答えた。
 「会うのを楽しみにしてるよ。どんなに痛くしてくれるのか……」
 ネズミは、前田敦子とサド、そして大島優子の三人だけは個別に襲わないよう、フォンチーに頼んでいた。この三人は特別だ。自分の見えないところでいつの間にかやられているなんて面白くもなんともない。こいつらは自分の目の前で倒されるべきだった。
 そして、いよいよ、それが見られることになるかもしれない。
 ネズミはまた震えた。


 亜理絵根女子高等学校の校舎を出るときになって、ネズミは自分が失禁していたことを思い出した。夕闇に吹く北風がミニスカートの中を攪拌し、ひんやりとした感触を与えたからだった。どこかで下着を買わなくちゃ、と思った。
 ともあれ、今日の出来事はいい経験になった。
 スタンガンは結局受け取り、今はカバンの中にある。やはり付け焼刃はよくないということか。躊躇なく使うには練習が必要だ。援助交際でもするフリをして、のこのこ現れたオヤジでも実験台にするか……。でも、これも面倒だ。
 となると――やはり、自分を守ってくれる「武力」が必要だ。
 暴力を否定するがゆえに、その暴力によって自分を守らなければならないという自家撞着に陥りつつも、ネズミの頭はすばやく回転した。
 そしてネズミは思い当たった。
 まだ、だれの傘下にも入っていない、一匹狼のあの女に……。



 【つづく】

『週刊文春』読んだ。

 14, 2010 20:20
 コンビニで立ち読みしたよ。
 んで、思ったのは、意外と憶測で記事を書いているということ。ある意味、拍子抜けした。才加と広井王子が抜き差しならない関係になっている決定的証拠でもあるのかと思ったんだけど(笑)。
 要するに夜中に広井が才加のマンションまで来たってことは事実のようだが、それから先は密室の中のことだから優秀な文春取材班でもわからなかったみたい。
 ぼくは、才加に彼氏がいようがいまいが別にかまわない。ぼくは才加の才能(外見も才能のひとつ)に惚れているのであり、「秋元才加」という個人に惚れているのではないからだ。メディアを通して接することができればいいし、そこにきちっと線引きをするのが良きファンであり、ぼくは良きファンでいたいと思っている。
 ただ、問題はその相手だ。ま、それについてはのちほど。

 最初にこのニュースを聞いたときに思ったのは、二人とも迂闊すぎるということだ。
 理由はどうあれ、アイドルの部屋に夜中に男が一人で入っていくことについて、二人とも想像力がなさすぎだろう。まさか自分を狙っているとは思わなかったのかもしれないが、それこそが迂闊なのだ。
 文春の記事によると、才加は同期のメンバーと一緒に暮らしているそうだから、やましいことはない思っていたのかもしれない。
 一方、広井も自分はあくまでもモノを教える立場だと思っていたかもしれない。やましいことはなにもない、と。
 けれども、ニュースが流れるとネットは沸騰した。
 自分の推しを「肉便器」とか「枕営業」などと呼ばれていい気分はしない。
 やましいことがなくとも、そうなることくらい、二人とも大人なんだから考えるべきだ。この点に関して、二人は猛省するべきだと思う。推しのメンバーにきつい言い方をするのは心苦しいが、なんでもかんでも無条件に受け入れるのはどうかと思う。そうしたい人はそうすればいいけど。

 そして、もっとも反省すべきは広井だろう。
 一人でのこのこ行かず、だれか連れて行けばこれほどの騒ぎにはならなかっただろう。配慮が足らないよ。
 理由が何であれ、才加にマイナスイメージをつけてしまったことは事実なんだから、もうAKBには関わらないでほしい。ま、これはぼくはずっと言ってきたことだけど(笑)。
 この件で広井が自身のブログでなんと言っているかというと、

 「週刊文春の記事にびっくりしています。

 と同時に、ちょっと軽率だったなと思っています。」

 ちょっとじゃねぇだろ。
 才加には悪いけど、こんな程度の認識しかない男から教わることなんてなにもないと思うよ。

 前にも書いたけど、広井王子の作った芝居はひどかった。特に『ミンキーモモ』は最悪だった。あんなつまらない芝居は初めて見た。
 才加は自分を見出してくれた広井に恩義は感じていると思う。だけど、もっとたくさんの、いろんな芝居や映画を見たり、本を読んだりしたら、やがて気づくと思う。気づいてほしい。

 前から気に入らなかった広井をこの機会に叩いている、と思われてもいい。とにかく才加だけでなく、AKBは広井王子と縁を切り、別の演出家を探すべきだ。
 男女が一つの部屋で一夜を過ごしたら、なんでセックスしたことになるのかまったくわからんですよ。

 寛大なカミさんのおかげで、おれはときどき女子と二人で旅行したり、泊り込みの撮影したりすることがあって、女子と同じ部屋に泊まるけどセックスなんかしない(笑)。
 けど、一般的には疑われても仕方ないとは思ってる。だから、いくらおれが「してない」と言っても信じない人は信じないだろうな。ま、信じないならそれはもう仕方ない。

 今回の件がそうだ、と言いたいわけじゃないけど、そういう男と女の仲もありえる、ということを、おれは知っている。

デジぱれ更新。

 09, 2010 16:58
 久しぶりにダウンロード販売サイト「デジぱれ」に新作アップしました。『DLゲッチュ』ではすでに販売されているもので、内容は同じです。

 http://www3.llpalace.co.jp/dp/dtl/DPI31950.asp?DLK=2&FLG18=1&CLASS1=11

 他のものもなるべく早くアップしますので、デジぱれ会員の皆さん、もう少しお待ちください。

2010年9月に見た映画。

 09, 2010 12:27
 ■新作■
  『ヤギと男と男と壁と』
  『ペルシャ猫を誰も知らない』
  『ヒックとドラゴン』
  『BECK』
  『トイレット』
  『月に囚われた男』
  『悪人』

 ■旧作■
  『河童のクゥと夏休み』
  『SRサイタマノラッパー』

 ■新作順位■
  1『ぼくのエリ 200歳の少女』
  2『息もできない』
  3『第9地区』
  4『(500)日のサマー』
  5『ヒーローショー』
  6『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
  7『ブルーノ』
  8『アイアンマン2』
  9『ハート・ロッカー』
  10『クロッシング』
  11『ヒックとドラゴン』
  12『川の底からこんにちは』
  13『悪人』
  14『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
  15『アウトレイジ』
  16『ラブリーボーン』
  17『インビクタス』
  18『渇き』
  19『プリンセスと魔法のキス』
  20『トイ・ストーリー3』
  21『プレシャス』
  22『シャーロックホームズ』
  23『インセプション』
  24『ペルシャ猫を誰も知らない』
  25『ヤギと男と男と壁と』
  26『仮面ライダーW FOREVER AtoZ 運命のガイアメモリ』
  27『私の優しくない先輩』
  28『月に囚われた男』
  29『カラフル』
  30『ベストキッド』
  31『アリス・イン・ワンダーランド』
  32『涼宮ハルヒの消失』
  33『コララインと魔法のボタン』
  34『すべて彼女のために』
  35『マイレージ・マイライフ』
  36『必死剣鳥刺し』
  37『ゼブラーマン2』
  38『キャタピラー』
  39『戦闘少女 血の鉄仮面伝説』
  40『時をかける少女』
  41『ソルト』
  42『パレード』
  43『シャネル&ストラヴィンスキー』
  44『サロゲート』
  45『ウルフマン』
  46『武士道シックスティーン』
  47『書道ガールズ!』
  48『シュアリー・サムデイ』
  49『ニューヨーク、アイラブユー』
  50『パーフェクト・ゲッタウェイ』
  51『シャッターアイランド』
  52『BECK』
  53『かいじゅうたちのいるところ』
  54『トイレット』
  55『天装戦隊ゴセイジャー エピックON THEムービー』
  56『ACASIA』
  57『告白』
  58『食堂かたつむり』
  59『矢島美容室THE MOVIE 夢をつかまえネバダ』
  60『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』

 今月は、すでに順位付けしたものも、こっそり変更しました。『私の優しくない先輩』とか(笑)。
 『ヤギと男と男と壁と』は疑似科学とかオカルト系にハマっている人にお薦め。そういう映画じゃないけど、そういうふうにも楽しめる……かな。
 『ペルシャ猫を誰も知らない』は『BECK』と二本立てで見るといいよ。自分の好きな音楽をやるだけで逮捕される国が、いま存在しているってことを知れただけでも見た価値がある。音楽に携わっている人はみるベッキー。
 『ヒックとドラゴン』は、もういろんな人がいろんなところで褒めまくっているし、それにまったく異論はない。見てない人は見るべき。「ペット」問題は、おれはほとんど気にならなかったなあ。だって所詮、ドラゴンは動物であって、一線を引かなければいけない関係でしょう。競走馬と調教師の関係っぽいかな。馬はかわいいし、それなりに頭もいいけど、やっぱり動物でしょう。言葉のチョイスの問題として「ペット」はいかがなものかという気はするけど。
 『BECK』は佐藤健問題がやっぱり気になる。ハロルド作石からの要望だったということらしいけど、だったら映画にするべきじゃないよね。ただ、この映画のキャストはなかなかよかったと思う。ちがう監督がちゃんと考えて映像化してコユキにも歌わせれば面白くなったかも。
 『トイレット』はオタクの生態をきちんと描かない(=オタクを舐めている)のが腹立たしい。プラモマニアは作ったものより作ってないもののほうが多いし、あんなに雑な作り方しない。そもそも「工房」がない時点でなにもわかってないってわかる。でも、この映画はそういう細かいことを言うおれみたいなどうしようもない人間に向けて作ってないんだろうし、たぶん、それを理由にこういう批判はかわされるんだろうと思うと余計に腹が立ってくる。
 『月に囚われた男』はDVDで。ケビン・スペイシーがどこに出てたのかずっとわからなかったんだが、それもそのはず。おれ、吹替で見てたんだよね(笑)。ともあれ、設定には無理があるものの(いくらなんでも一人で仕事をさせるってのは心理的にも肉体的にも無理がある)、昔のいわゆる「SF映画」を髣髴させる雰囲気はおれ好みだった。テレビ冬季用で昼間にやっている映画が好きな人は楽しめるはず。
 『悪人』は後半が情緒的すぎてダルいけど、なかなかの力作。『告白』みたいに死を軽く扱っている作品に感動した人には響かないだろうけど。

 んな感じ。

スプリンターズS予想。

 03, 2010 08:09
 ◎ワンカラット
 ○グリーンバーディー
 △キンシャサノキセキ

 勝負馬券はワンカラットとグリーンバーディーのワイドかな。
 ワンカラットは単勝は怖いけど、複勝はオッズ低いだろうし。
 キンシャサノキセキは年齢的に一枚割引したけど、最近は高齢馬も活躍しているので一発あってもおかしくない。
 穴ならファイングレイン。16番人気なのでワイドの相手でもおいしいオッズのはず。消去法では消えたけど、内田博幸が乗っているヘッドライナーも気になる。
 でもまあ、いずれにしても、今日はあんまり買わない予定。

WHAT'S NEW?